背脂を生で食べると旨みがほとんど感じられず、損をします。
ラルド(lardo)とは、豚の背脂を塩漬けにしてハーブやスパイスとともに長期熟成させた、イタリア発祥の食材です。見た目はほぼ真っ白な脂の塊ですが、一口食べるとハーブの香りと熟成された旨みが口の中に広がり、その虜になってしまう人が続出しています。
日本では「ラード」と名前が似ていますが、まったく別物です。ラード(ラルドのイタリア語読みの転用)は豚脂を加熱して精製した調理用の油脂ですが、ラルドはそのまま食べることを前提とした「脂身の生ハム」といえます。イタリア語では調理用の精製豚脂は「ストゥルット(strutto)」と呼ばれており、ラルドとは製法も用途もまったく異なります。
サイゼリヤの「ラルド&プチフォッカ」というメニューで、日本でのラルドの知名度は一気に上がりました。熱々のフォカッチャの上に薄切りのラルドをのせると、余熱でじんわりと溶けていく様子は、まさにイタリア本場の食べ方そのものです。その魅力にハマった方が「自宅で作れないか?」と興味を持つのは自然な流れといえます。
ラルドの起源は2000年以上前にさかのぼるとされており、トスカーナ州コロンナータ村の大理石採掘労働者たちが、高カロリーな保存食として愛用してきた歴史があります。現在はイタリアのスローフード協会にも認定されるほどの伝統食材に成長しています。
ラルドの原料は「脂だけ」です。
「貧乏人の生ハム」と呼ばれていた過去がある一方で、最高級品の「ラルド・ディ・コロンナータ IGP」は50gあたり800円以上、300gのブロックで5,000円近くする高級食材に変貌しています。これが、自宅で作ることへの関心を高める大きな理由のひとつです。
イタリア・ラルドに関する詳細な情報(歴史・産地・IGP認定)については、以下のページも参考になります。
ラルドを作るにあたって、まず材料の選択が仕上がりの8割を決めるといっても過言ではありません。なぜなら、ラルドは脂だけで構成される食材なので、素材の質がそのまま味に直結するからです。
🐷 材料(作りやすい分量:背脂500g〜1kg程度)
| 材料 | 分量の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 豚の背脂(皮付き推奨) | 500g〜1kg | 精肉店で入手がスムーズ |
| 岩塩または粗塩 | 背脂の重量の8%前後 | 精製塩よりも粒が粗いものが◎ |
| 黒コショウ(粗挽き) | 小さじ1程度/500g | 粒感のあるものが風味豊か |
| ニンニク | 2〜3片/500g | つぶすか薄切りにする |
| ローズマリー(乾燥または生) | 小さじ1〜2/500g | 生なら2〜3枝分 |
| ローリエ | 2〜3枚/500g | 香り付けに有効 |
| タイム | お好みで | ジュニパーベリーも相性良し |
豚の背脂は、スーパーでは手に入りにくいことがありますが、近所の精肉店に声をかけると100gあたり10〜20円程度で入手できる場合があります。これはラルド・ディ・コロンナータの最高級品(50gで800円超)と比較すると、実質的な価格差は100倍以上です。コスト面でも自家製の魅力は計り知れません。
🛠️ 必要な道具
- ジップ付き保存袋(真空ポンプ対応のものが理想)
- 食品用アルコールスプレー
- キッチンペーパー
- まな板・包丁(使用前に消毒必須)
- ラベル用テープ(仕込み日を記録するため)
真空パックに対応した保存袋は、酸化防止の点で特に重要です。脂身は普通の肉と比べて水分が少ないため塩抜きができず、酸化による劣化が主なリスクとなります。空気を抜ける袋を使うと熟成の品質が安定します。これが基本です。
なお、背脂の皮(豚の皮)が付いているものを選ぶと、本場のラルドの雰囲気に近くなります。皮は食べませんが、熟成中に形を保つ役割を果たします。
自家製ラルドの材料についてのさらに詳しい解説はこちらも参考にどうぞ。
ラルドの作り方を徹底解説!材料選びから熟成までの流れ(おつまみプレミア)
ラルドの作り方はシンプルで、大きく「①下処理 → ②塩漬け → ③熟成 → ④仕上げ」の4工程に分かれます。工程そのものは難しくありませんが、各ステップでの丁寧さが最終的な味を大きく左右します。
🔪 ①下処理(トリミング)
背脂に残っている赤身や軟骨、筋などを包丁で取り除き、できる限り「脂のみ」の状態にします。この工程がしっかりできていると、仕上がりの見た目と食感が格段によくなります。作業前は必ず食品用アルコールで手と道具を消毒してください。
🧂 ②塩漬け
下処理が終わったら、塩とスパイスをよく混ぜ合わせたものを背脂の表面全体にしっかりとすり込みます。塩の量は背脂重量の8%前後が実績として良好な結果が得られやすいです。4%だと物足りなく、10%だとやや塩辛い傾向があるため、8%を基準にするのが安全です。
塩とスパイスをすり込んだらジップ袋に入れ、ポンプで空気を抜いて真空に近い状態にしてください。真空パックは外から圧がかかることで塩が染み込みやすくなる効果もあります。仕込み日をラベルに書いて袋に貼り、冷蔵庫に入れたら準備完了です。
🌡️ ③熟成
冷蔵庫(2〜5℃程度)に入れたまま、最低3週間〜最長6ヶ月ほど待ちます。熟成中は月に一度程度袋を確認し、異臭やカビがないかチェックするだけで問題ありません。
熟成期間と仕上がりの変化は以下の通りです。
| 熟成期間 | 食感の変化 | 風味の変化 |
|---|---|---|
| 3週間 | やや締まった感触 | 塩気が前面に出る |
| 1ヶ月 | 少しなめらかになる | ハーブの香りが脂に移る |
| 3ヶ月 | とろける柔らかさ | 旨みの深みが増す |
| 6ヶ月 | バターより滑らか | 複雑な熟成香がつく |
つまり、時間をかけるほど旨みが深くなります。
✂️ ④仕上げ
熟成が終わったら袋から取り出し、表面の余分な塩やスパイスをキッチンペーパーで軽く拭き取ります。薄切りにして食べるのがラルドの基本スタイルです。スライサーがあれば1〜2mm程度の薄さに切ると、余熱で溶けやすくなり、本場の食感に近づきます。
すぐに食べない分は清潔なラップで包み直し、密封容器に入れて冷蔵保存してください。自家製ラルドの冷蔵保存期間は2週間〜1ヶ月を目安に考えておくのが安全です。
自家製ラルドの実際の熟成経過(半年間のレポート)については以下が参考になります。
脂身の生ハム「ラルド」が自作できたので好き放題に食べよう(デイリーポータルZ)
ラルドの自家製で最も失敗しやすいポイントは、「衛生管理の甘さ」と「塩分量のミス」の2点です。この2つさえ押さえれば、初心者でも十分に成功できます。
🦠 衛生管理について
ラルドは長期にわたって生の豚脂を熟成させる食品です。雑菌が混入した状態で熟成を続けると、食中毒リスクが高まるため、衛生面は徹底することが絶対条件です。
- 作業前に手・まな板・包丁・保存袋を食品用アルコールで消毒する
- 背脂をトリミングするたびに道具を清潔に保つ
- 熟成中に袋が破れていないか、カビや異臭がないかを定期確認する
- 少しでも異変を感じたら食べずに処分する
これは徹底に尽きます。生ハムの製造でも衛生管理は最重要視される工程であり、自家製の場合は商業施設のような設備がない分、より丁寧な対応が求められます。
🧂 塩分量の黄金比について
デイリーポータルZの実験レポートによれば、塩分4%・8%・10%の3パターンで実際に仕込んで比較した結果、「8%が最もバランスが良い」という結論が出ています。4%では熟成後でも塩気の存在感が薄く、10%では食べた際の塩辛さが目立ちました。
肉の塩漬け(パンチェッタや生ハムなど)では「肉の重量の10%の塩を使い、完成時に塩抜きをして4〜5%に落とす」という手法が一般的です。しかし脂身は肉と異なり、塩抜きができないという大きな制約があります。この点を知らずに生ハムのレシピをそのまま流用すると、塩辛くて食べられないラルドが完成してしまうリスクがあります。
塩抜きなしで仕上げることを前提にした「8%仕込み」が安全です。
🌡️ 温度管理について
一般的な家庭用冷蔵庫(2〜5℃)で問題なく熟成できます。ただし、冷蔵庫内の温度変化が大きい場所(ドア付近など)は避け、なるべく庫内の奥に置くようにしましょう。本場コロンナータ村では大理石の「コンカ」と呼ばれる箱を自然の洞窟に置いて6ヶ月〜10ヶ月熟成させますが、その代わりに冷蔵庫+真空パックという組み合わせが家庭では最もリスクが少ない方法です。意外ですね。
自家製生ハム・ラルドの衛生リスクについてのくわしい解説はこちら。
生ハムを自家製で作るときの危険とリスクとは?(詳細解説記事)
完成したラルドをせっかくなら多様な食べ方で楽しみましょう。ラルドは「生でそのままかじる」のが正解ではありません。薄切りにして熱を加えることで、脂が溶け出して旨みが最大限に引き出されます。これが基本です。
🥖 定番の食べ方
バゲット+ラルド(サイゼリヤ風)
バゲットをトースターで1〜2分カリッと焼き、熱いうちに薄切りラルドをのせます。パンの余熱でラルドがじんわり溶け出し、ハーブの香りと脂の甘みが広がります。お好みでハチミツやミックスナッツをトッピングするとさらに絶品です。これがサイゼリヤの「ラルド&プチフォッカ」の家庭版といえます。
白飯+ラルド(ラル丼)
炊きたてのご飯にダイス状に刻んだラルドを山盛りのせ、少量の醤油を垂らすだけ。ご飯の熱でラルドが溶けて米粒に絡み、「止まらない」という感想が続出します。デイリーポータルZのレポートによれば、茶碗いっぱいが瞬く間になくなるほどの破壊力があるとのことです。
🍝 料理への活用
| 使い方 | 効果 |
|---|---|
| パスタの仕上げに薄切りをのせる | コクと熟成の香りがプラス |
| リゾットのトッピングにする | 余熱で溶けてクリーミーに |
| ハンバーグに刻んで混ぜる | ベーコン巻きより濃厚な旨み |
| 温野菜・グリル野菜の上にのせる | シンプルな野菜が格上げされる |
| スクランブルエッグに混ぜて炒める | 脂の旨みが卵全体に広がる |
🔥 スモークド・ラルドという上級アレンジ
自家製ならではの楽しみ方として、燻製(スモーク)にするという方法があります。熟成が完了したラルドをスモーカーに入れて燻すと、ベーコンの脂身部分のような濃厚な燻製香をまとった「スモークド・ラルド」が完成します。そのまま薄切りにしてつまみにしても良し、ハンバーグに混ぜても良し、と応用範囲がさらに広がります。
高級品では「もったいなくてできない」食べ方を気軽に試せるのが、自家製ラルドの最大の醍醐味といえます。これは使えそうです。
ラルドのさまざまな食べ方(実食レポート付き)は以下も参考にしてください。
脂身だけの生ハム「ラルド」は自作できるのか(デイリーポータルZ)
ラルドの自家製で見落とされがちな難点のひとつが「時間の管理」です。最低でも3週間、理想的には1〜6ヶ月という熟成期間があるため、「仕込んだのに食べるタイミングを逃してしまう」「気づいたら冷蔵庫で忘れ去られていた」というケースが初心者に多く起こります。
仕込み日の記録が条件です。
以下のような「ラルドカレンダー」方式を取り入れると、無理なく管理できます。
📅 推奨スケジュール(冷蔵庫熟成・初挑戦向け)
| タイミング | やること |
|---|---|
| 仕込み当日(Day 0) | 背脂を下処理・塩漬け・真空パック。ラベルに日付を記入 |
| 1週間後(Day 7) | 袋の状態確認。異臭・液漏れがないかチェック |
| 3週間後(Day 21) | 最短で食べられる目安。一部を試食して塩加減を確認 |
| 1ヶ月後(Day 30) | 食べごろの中心ゾーン。ハーブの香りが脂に移り始める |
| 2〜3ヶ月後 | 旨みが深まった熟成ゾーン。じっくり待てた分だけ報われる |
| 6ヶ月後 | 最大熟成。本場コロンナータ級の深みに近づく可能性あり |
「熟成が進むほど良い」というのは正しいですが、2ヶ月を超えたあたりで表面の乾燥が進む場合があります。定期的に袋の様子を確認し、乾燥が気になるようであれば早めに食べ始めることをおすすめします。
また、初めての挑戦では500g程度の少量から始めることをおすすめします。理由は2つあります。ひとつは、失敗した場合の食材ロスを最小限に抑えるため。もうひとつは、冷蔵庫の占有スペースを圧迫しすぎないためです。1.5kgの背脂は、冷蔵庫の棚ひとつをほぼ半年間専有することになります。
慣れてきたら量を増やし、スパイスの組み合わせを変えて味を比較するなど、自分だけのレシピを作るのがラルド作りの真の楽しさかもしれません。ローズマリーを中心にしたタイプ、ニンニクを強めにしたパンチのあるタイプ、ジュニパーベリーで香りに個性をつけたタイプなど、アレンジの幅は広いです。
背脂の原価が驚くほど低い(100g約10〜20円)という現実を活かして、さまざまな配合を実験できるのも自家製ならではです。これなら問題ありません。
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