バジルソースをかければどのパスタでも同じ味になる、と思っていると大きな損をします。
トロフィエは、見た目が「こより」や「かんなくず」に似た、全長4〜5cmほどのショートパスタです。はがきの横幅が約10cmなので、その半分より少し長いくらいのサイズ感です。表面はねじれており、両端が細くなっているのが構造上の最大の特徴です。
このねじれ形状には、明確な機能的理由があります。スパゲッティのようなストレート麺と比較すると、ソースが接する表面積が約1.3〜1.5倍に増加します。さらにねじれの"溝"がソースを内側に引き込み、食べるときに一緒に口へ運ばれる設計になっています。つまりソースが絡みやすい形です。
名前の語源もこの形成方法に由来します。ジェノヴァ方言の「ストロフィッサ(strufuggiâ)」、つまり「すりつける・こする」という動作を指す言葉から来ており、手のひらで生地を斜めにこすりながら形を作ります。工場でも機械でこの動きを再現して製造されています。
サイゼリヤのメニューでも「ソースがよく絡むショートパスタ」として明確に紹介されており、このパスタ形状の特性が重視されています。ねじれ構造が命です。
トロフィエに合うソースは、ジェノベーゼだけではありません。本場リグーリアの調理師やパスタメーカー・八面六臂の商品説明によれば、以下のソースとの相性が確認されています。
ソースの選択基準はシンプルです。粒感のあるソース・ペースト系・クリーム系に対してトロフィエは特に威力を発揮します。逆に、ペペロンチーノのような油だけのシンプルソースの場合は、オイルがねじれに入り込みすぎてしつこさを感じることもあります。オイル系は少し注意が必要です。
参考:トロフィエをはじめとするショートパスタとソースの相性について詳しく解説されています。
「トロフィエにじゃがいもとインゲンを入れるなんて聞いたことない」と思う方もいるかもしれません。でも実は、それが本場ジェノヴァの正式な完成形なのです。
本場ジェノヴァの伝統レシピでは、鍋一つで3種類を同時に茹でます。手順はこうです。
なぜじゃがいもを入れるのか? それには実用的な理由があります。じゃがいもが茹で汁にデンプンを溶け出させ、その汁がペストソースと合わさると乳化が促進されます。ソースがパスタ全体に均一に絡みやすくなるのです。現代でいうところの「パスタの茹で汁でソースを乳化させる」という技法と同じ原理を、数百年前から自然に実践してきた、ということになります。
インゲンの役割も大きいです。シャキシャキした食感がパスタのモチモチ感と対比になり、緑色がソースの色と調和して見た目にも映えます。味の対比が生きています。
サイゼリヤでも「じゃがいもとインゲンのトロフィエ」(2018年3月〜6月)として、このスタイルをそのままメニュー化していました。地域のテロワールを尊重したメニュー構成といえます。
参考:本場ジェノヴァのトロフィエ・アル・ペストの歴史と作り方が丁寧にまとめられています。
段々畑の暮らしが作った味:トロフィエ・アル・ペスト入門 | note
サイゼリヤは2017年から2022年にかけて、トロフィエを使った複数のメニューを展開してきました。以下にその変遷を整理します。
| 提供時期 | メニュー名 | ソースの種類 | 価格 |
|---|---|---|---|
| 2017年9月〜12月 | きのこクリームソースのトロフィエ | きのこ+クリーム+パンチェッタ | 399円 |
| 2018年3月〜6月 | じゃがいもとインゲンのトロフィエ | ペスト(バジル系) | 399円 |
| 2018年9月〜12月 | きのこのクリームソースのトロフィエ(再) | きのこ+クリーム | 399円 |
| 2021年6月〜9月 | ペストジェノベーゼ[トロフィエ] | バジルペスト+ペコリーノチーズ | 400円 |
| 2021年9月〜2022年3月 | ラムのラグー トロフィエ | ラム肉のラグー | 600円 |
これを見ると、サイゼリヤが採用したトロフィエのソースは「クリーム系」「バジルペスト系」「肉ラグー系」の3種類に分かれています。バリエーションが豊かですね。
注目すべきは価格です。2017〜2021年の間に399円〜600円と幅があり、ラムのラグーだけが600円とやや高価な設定でした。それでも本格的なラム肉ラグーを使ったパスタとしては破格のコスパといえます。
現在(2026年3月時点)はトロフィエを使ったメニューはグランドメニューから外れていますが、季節限定での復活が期待されています。過去の復活パターンから見ると、秋冬のタイミングで再登場する可能性が高い傾向があります。
参考:サイゼリヤのトロフィエを使ったジェノベーゼ系パスタの変遷が詳細にまとめられています。
ペストジェノベーゼ(スパゲッティ/トロフィエ) | サイゼリヤはちゃんとおいしい
サイゼリヤのトロフィエメニューが終了していても、自宅で再現することはじゅうぶん可能です。市販のトロフィエ(乾燥タイプ)はAmazonや輸入食材店、カルディなどで入手できます。茹で時間は乾燥タイプで11〜13分が目安です。
ソースの選択肢は大きく2パターンあります。
① 市販ペストソース+本場スタイルアレンジ
市販の瓶詰めバジルソース(キューピー「あえるパスタソース バジル」やOIL&VINEGAR「バジルジェノベーゼソース」など)を使い、じゃがいもとインゲンを加えるだけで本場スタイルに近づきます。コツは2点だけです。
加熱しすぎないのが条件です。バジルの香り成分は揮発しやすく、60℃以上で急激に失われます。本場のペスト世界選手権でも「酸化と熱を避ける」ことが公式ルールに明記されているほどです。
② きのこクリームソースでサイゼリヤ風再現
市販のクリームソース(生クリーム200ml+市販の顆粒コンソメ小さじ1)に、しめじやエリンギを炒めて合わせるだけで「きのこのクリームソースのトロフィエ」を家庭で再現できます。仕上げにパルミジャーノか粉チーズをふると、一気にサイゼリヤの雰囲気に近づきます。これは使えそうです。
市販のトロフィエを購入する際、スーパーでは乾燥ショートパスタのコーナーに置かれていないことも多く、輸入食材コーナーや専門店を確認するのがおすすめです。見つからない場合はフジッリ(スパイラル型)で代用すると食感とソースの絡みが近い仕上がりになります。
参考:トロフィエとバジルジェノベーゼソースを使ったレシピが掲載されています。
バジルジェノベーゼソースのトロフィエパスタ | OIL&VINEGAR

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