「パルミジャーナ」という名前だから、北イタリアのパルマが発祥地だと思って頼んでいると、本場のシェフに笑われますよ。
「パルミジャーナ ディ メランザーネ(Parmigiana di melanzane)」というイタリア語を初めて見たとき、何が何だかわからないと感じる方は多いと思います。まず分解して理解しておきましょう。
「メランザーネ(melanzane)」とは、イタリア語でナス(茄子)のことです。つまり「パルミジャーナ ディ メランザーネ」を直訳すると「ナスのパルミジャーナ」となります。「ディ(di)」は英語の「of」に相当する前置詞です。シンプルな構造ですね。
では「パルミジャーナ」とは何か。これが少しやっかいで、一般的には「パルマ風の」という意味をもつイタリア語の形容詞です。パルマといえば、北イタリアのエミリア=ロマーニャ州にある都市で、パルミジャーノ・レッジャーノチーズやプロシュット・ディ・パルマ(生ハム)で世界的に有名なグルメシティ。そのため、この料理もてっきりパルマが発祥だと思われがちです。
ところが実際の有力説は全然違う場所を指しています。南イタリアのシチリア島、またはカンパーニア州(ナポリ周辺)が発祥とされているのです。これについては次のセクションで詳しく触れます。
ちなみにイタリアでは「パルミジャーナ ディ メランザーネ」のほかに、「メランザーネ・アッラ・パルミジャーナ(melanzane alla parmigiana)」とも呼ばれます。どちらも同じ料理を指す別名です。「なすのパルマ風重ね焼き」「ナスとトマトソースの重ね焼き」などと日本語訳されることもあります。
「パルミジャーナ」という名前なのにパルマとは無関係かもしれない、というのは料理好きにとって非常に興味深い事実です。では一体なぜ「パルミジャーナ」と呼ばれるようになったのでしょうか。
シチリア・ナポリ発祥が有力という点について、まず確認しておきましょう。ナスがイタリアにもたらされたのは、1400年代にアラブ人によってシチリアに持ち込まれたのが始まりとされています。当時イタリアでナスは「ペトロンチアーナ(petronciana)」と呼ばれており、南イタリアのシチリアやカンパーニア州でナスの栽培が特に盛んでした。自然と、この地域でナスを使った料理が生まれたのは必然だったと言えます。
なぜ「パルミジャーナ」と呼ばれるようになったかについては、学者の間でも意見が分かれています。現在もっとも有力とされている説は2つです。
どちらの説もパルマとは直接関係のない名前の由来となっています。一方で、「パルマの人は野菜を層にした料理が上手だったからパルマ風と呼ばれた」というパルマ発祥説も存在しますが、これは「少々強引な気もする」という意見もあり、現在はやや少数派です。
つまり「パルミジャーナ」という名前の由来は、南イタリアの言葉の変化や料理の形からきている可能性が高い、ということです。
参考:本場イタリアからパルミジャーナの名前の由来と発祥についての詳細な解説があります。
【本場イタリアのレシピ】茄子のパルミジャーナ の作り方と発祥の謎|bacchetteepomodoro
この料理の本質は「層(レイヤー)」にあります。ラザニアに構造が似ている、とよく言われるのはこのためです。ナス・トマトソース・チーズを交互に重ねてオーブンで焼き上げる、このシンプルな積み重ねが料理の醍醐味です。
基本の材料(4〜5人分の目安)は以下の通りです。
| 材料 | 分量の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 🍆 米ナス | 3本(普通のナスなら5本) | 肉厚なものが◎ |
| 🍅 トマトピューレ | 400ml(トマト缶2缶) | 完熟トマトを使うと旨みが増す |
| 🧀 モッツァレラチーズ | 300g | 使う前に水切り30分が必須 |
| 🧀 パルミジャーノ・レッジャーノ | 100g(すりおろし) | コクと塩気のアクセントに |
| 🌿 バジルの葉 | 数枚 | 爽やかな香りをプラス |
| 🧅 玉ねぎ・にんにく | 各適量 | トマトソースの香り付け用 |
チーズは2種類使うのが王道です。モッツァレラのような柔らかいチーズがとろける食感を担い、パルミジャーノ・レッジャーノのような熟成ハードチーズが深いコクと塩気を加えます。この組み合わせによって味に奥行きが生まれます。
地域によってバリエーションもあります。南イタリアの一部では、モッツァレラの代わりにカチョカヴァッロ(セミハードタイプのチーズ)を使うことも。シチリアではゆで卵のスライスを層の間に入れる家庭もあり、卵黄のコクが加わってより濃厚な仕上がりになります。
サイゼリアのメニューに通じるイタリア料理の考え方の核心がここにあります。素材そのものの組み合わせの妙で、シンプルな材料から複雑な味を引き出す、という哲学です。
家でパルミジャーナ ディ メランザーネを作って「なんか油っぽくなった」「仕上がりが水っぽかった」という経験がある方は、ナスの下処理に原因があるケースがほとんどです。
日本の家庭でのナスのアク抜きといえば、水にさらすのが一般的です。しかし、パルミジャーナに関しては塩をふってアクと水分を同時に抜くイタリア式が正解です。
イタリア式ナス下処理の手順は、次のようになっています。
なぜこれが重要なのか、説明します。ナスは構造上、非常に多くの水分と油を吸収しやすい野菜です。水分をしっかり抜いておくことで、揚げたときに油をほとんど吸わなくなります。つまり「塩をふって1時間おく」というひと手間が、仕上がりの油っぽさを大幅に減らすのです。
少ない油でカラッと揚げられるので、意外にも油っこい料理にはなりません。また、同様にモッツァレラチーズも使う前に30分水切りをすることが、料理全体が水っぽくなるのを防ぐために必須です。モッツァレラは水分が多いチーズなので、そのまま使うと焼いたときに大量の水分が出てしまいます。
下処理を丁寧にやるかどうかで、完成品のクオリティは明らかに変わります。時間はかかりますが、この工程だけは省略しないことが条件です。
サイゼリアが日本に根付かせたイタリア料理の魅力の一つは、「手頃な価格で本格的な味が楽しめる」という体験です。パルミジャーナ ディ メランザーネも、その精神を体現している料理といえます。
サイゼリアのメニューにはナスを使ったメニューやトマト+チーズの組み合わせを活かした料理が多くありますが、パルミジャーナの考え方はその核心にあります。「素材を重ねて焼き上げる」というシンプルな調理法でも、素材の選び方と重ね方次第でまったく異なる味わいが生まれます。
家でサイゼリア風のパルミジャーナを楽しみたいときに知っておくと便利な知識が2点あります。
まずオーブンなしで作るグリル版の選択肢です。ナスをオリーブオイルを塗ってグリルパンで焼き、フライパンで重ねて蓋をして蒸し焼きにする方法でも、ナスのトロトロ感とチーズのとろけ感を再現できます。仕上がりは揚げバージョンよりあっさりしますが、調理時間と手軽さの面では大きなメリットがあります。
次に冷めても美味しいという特徴を活かす視点です。パルミジャーナは作り置きに向いている料理で、冷蔵で3〜4日保存できます。さらに小分けにして冷凍しておくと、必要な分だけ電子レンジで温めて食べることができます。1回に4〜5人分を作っておいて、数日にわたって食べるというのが本場イタリアのマンマスタイルです。
「温かいうちに食べるもの」と思い込んでいると損をします。パルミジャーナは冷めた状態でも層が落ち着いて切り分けやすくなり、味がなじんで翌日のほうが美味しいと感じる方も少なくありません。オーブンから出して5〜10分休ませてから切り分けるのが基本です。
参考:イタリアの郷土料理としてのパルミジャーナの詳しい解説と、ナポリ・シチリアそれぞれのスタイルの違いについてまとめられています。
マンマの味 "揚げナスのパルミジャーナ"|ホソピーのイタリア郷土料理レシピ