アマトリチャーナの辛いは本場では脇役だった

サイゼリヤのアマトリチャーナが「辛い」と感じる人も多いですが、本場イタリアでは唐辛子は必須ではありません。辛さの正体や調整方法、グアンチャーレの旨味を最大限楽しむコツまで徹底解説。辛いのが苦手でも楽しめる方法、知っていますか?

アマトリチャーナが辛いのは唐辛子だけのせいではなかった

サイゼリヤのアマトリチャーナに唐辛子を入れなければ辛さゼロで食べられます。


🍝 この記事でわかること
🌶️
辛さの正体

アマトリチャーナの辛さは唐辛子由来。本場・アマトリーチェ村の公式レシピでも唐辛子は「任意」扱いで、辛くない版が多数存在します。

🐷
グアンチャーレとは何か

豚ほほ肉の塩漬け「グアンチャーレ」がアマトリチャーナの主役。脂の旨味こそがこのパスタを他のトマトソースと決定的に差別化する要素です。

⚙️
辛さ調整の方法

唐辛子を取り出すタイミングや量の加減で、自分好みの辛さレベルに仕上げることができます。辛いのが苦手な方も諦めないでください。


アマトリチャーナが辛い理由:唐辛子の役割と歴史的背景


アマトリチャーナは、イタリア中部のラツィオ州にある小さな町「アマトリーチェ」を名前の由来とする、ローマを代表するパスタのひとつです。カルボナーラ、カチョ・エ・ペペと並ぶ「ローマ三大パスタ」として知られており、その長い歴史の中で辛さの位置づけは実に変化に富んでいます。


「辛い」と感じる原因は、主に唐辛子(ペペロンチーノ)です。しかし重要なのは、唐辛子はアマトリチャーナの必須食材ではないという点です。


アマトリーチェ村の公式サイトが公開している伝統レシピには、トマト・グアンチャーレ・ペコリーノ・ロマーノ・唐辛子・オリーブオイル・白ワインが記載されています。一方でローマの伝統スタイルでは、グアンチャーレ・トマト・ペコリーノ・ロマーノの3点が基本であり、唐辛子もオリーブオイルも使わない店が多数存在します。つまり、アマトリチャーナの辛さは「地域・店舗・家庭によってバラバラ」というのが実態です。


サイゼリヤでは過去に何度かアマトリチャーナが登場しています。2004年の初登場時はメニューに「ベーコン入り、ビリッと辛いトマト味のスパゲッティ」と記載されており、唐辛子入りのトマトソースが使われていました。一方、2016年の期間限定版「アマトリチャーナ ビアンコ」は唐辛子のないタイプ。辛さを省いたバリエーションもサイゼリヤは展開していたのです。


辛いのが苦手だという理由だけで食べるのを諦めるのは、もったいないですね。


サイゼリヤでのアマトリチャーナ提供履歴の詳細(makitani.net)


アマトリチャーナの辛さレベルを左右するグアンチャーレの正体

アマトリチャーナの本質を語るうえで、唐辛子よりもはるかに重要な食材があります。それが「グアンチャーレ(Guanciale)」です。


グアンチャーレとは豚のほほ肉(頰の部分)を塩と香辛料で漬け込み、乾燥・熟成させた塩漬け肉のことです。日本でなじみ深い「ベーコン」とは原料部位も製法も異なります。ベーコンは豚のバラ肉が原料ですが、グアンチャーレは頰肉特有の、口の中でほどける上質な脂が最大の特徴です。


なぜこれほどグアンチャーレが重要かというと、アマトリチャーナの調理はグアンチャーレの脂を「出汁」として扱う料理だからです。冷たいフライパンにグアンチャーレをのせ、弱火でじっくりと加熱して脂を引き出す。この「シュエ(汗をかかせる)」と呼ばれるフランス料理の技法と同様のアプローチで、豚骨ラーメンが骨から旨みを引き出すのと同じ発想で脂を活かします。


この脂の旨みとトマトの酸味、ペコリーノ・ロマーノの塩気とコクが三位一体となった味こそが、アマトリチャーナが他のトマトソースパスタと決定的に違う理由です。つまり、辛さはあくまで「脇役のアクセント」にすぎません。


サイゼリヤが2022年10月の期間限定版でイタリア産グアンチャーレを使用したのは、実はかなり希少な出来事でした。2022年1月から日本政府がイタリアからの豚肉製品の一時輸入停止措置を取ったため、在庫していたグアンチャーレを使い切ったこのアマトリチャーナが「サイゼリヤにおけるイタリア直輸入ハムソーセージを使った最後のメニューのひとつ」となっています。グアンチャーレが好きな方には、見逃せない情報です。


グアンチャーレが主役ということですね。


アマトリチャーナの辛い版と辛くない版の違い:アラビアータとの比較

「辛いトマトソースパスタ」といえばアラビアータを思い浮かべる方も多いでしょう。アマトリチャーナとアラビアータは混同されやすい存在です。両者の関係を整理しておくことが、アマトリチャーナの「辛さ」をより正確に理解する手助けになります。


アラビアータの名前はイタリア語で「怒りんぼ」を意味する「arrabbiata」に由来します。唐辛子の辛さで顔が赤くなる様子から生まれた名前です。材料はトマト・にんにく・唐辛子・オリーブオイルとシンプルで、辛さがこのパスタの「主役」であることが明確です。


これに対してアマトリチャーナは、以下の点でまったく異なるパスタです。





























項目 アマトリチャーナ アラビアータ
主役の味 グアンチャーレの旨味・チーズのコク 唐辛子の辛さ
唐辛子の扱い 任意(地域・家庭による) 必須
チーズ ペコリーノ・ロマーノが基本 原則なし
豚肉 グアンチャーレまたはパンチェッタ 不使用


アマトリチャーナは「豚の旨みとチーズのコクが主役のパスタ」です。辛さはあくまで味のアクセントとして加えるかどうかを決める要素であり、辛くしなくても成立する料理です。一方のアラビアータは唐辛子が命のパスタですので、同じ辛いトマトパスタに見えても設計思想が根本から異なります。


辛さが苦手でもアマトリチャーナなら問題ありません。


アマトリチャーナの辛さを自分好みに調整する3つの方法

アマトリチャーナを家庭で作る場合、または市販のソースや外食での注文時、辛さを自分の好みに調整するためのポイントをまとめます。


方法① 唐辛子を炒めて途中で取り出す


唐辛子を取り出すタイミングが辛さをコントロールする最大のポイントです。唐辛子はオイルや脂に短時間接触させるだけで香りが移ります。フライパンに加えて30秒ほど炒めたらすぐに取り出せば、辛さはほぼゼロに近い状態でアロマだけを引き出せます。逆に長く加熱するほどカプサイシンが溶け出し、辛さが強まります。辛いのが苦手な方は「短時間だけ炒めて取り出す」が基本です。


方法② 唐辛子の種を除く


唐辛子の辛味成分カプサイシンは、種と内側の白い部分(胎座)に多く含まれています。種を取り除いた状態で使えば、辛さを大幅に和らげながらも風味は残すことができます。ピリッとした香りだけを楽しみたい方に向いている方法です。


方法③ 唐辛子を最初から使わない


本場ローマのシンプルなアマトリチャーナはそもそも唐辛子を使いません。グアンチャーレ・トマト・ペコリーノ・ロマーノの3種類だけで完成します。辛さゼロ派には、このスタイルが最も理に適っています。グアンチャーレ特有の脂の甘みとペコリーノ・ロマーノの塩気・コクがダイレクトに感じられるので、むしろ食材の深みが際立ちます。


辛さ調整の方法は3点、これだけ覚えておけばOKです。


ちなみに、辛くしすぎてしまった場合の救済策もあります。辛み成分のカプサイシンは油に溶ける性質があるため、オリーブオイルを少量加えてよく混ぜると辛さが和らぎます。また茹で汁(パスタの茹で汁は塩分とでんぷんを含む)を加えて全体を伸ばすことでも辛さの濃度を下げることが可能です。


本場アマトリーチェ村公式レシピを参考にした本格アマトリチャーナの作り方(pasta-bible.com)


サイゼリヤ好きが知らないと損するアマトリチャーナ豆知識:ペコリーノとブカティーニ

アマトリチャーナをより深く楽しむために知っておくと得をする知識が2点あります。それがチーズ「ペコリーノ・ロマーノ」とパスタ「ブカティーニ」です。これらはアマトリチャーナの味と食感を他のパスタと決定的に差別化する要素です。


ペコリーノ・ロマーノとは何か


ペコリーノ・ロマーノは羊のミルクを使った硬質チーズです。牛乳から作られるパルミジャーノ・レッジャーノやグラナ・パダーノとは原料が異なり、独特の塩気と動物的なコクが特徴です。アマトリチャーナにパルミジャーノを使うのは、豚骨ラーメンに醤油ベースのタレを入れるくらいの「方向性のズレ」として本場では敬遠されます。


パルミジャーノは上品でクリーミーな甘みがありますが、ペコリーノ・ロマーノはより強い塩味と羊乳ならではの野性的な香りを持ちます。この「クセの強さ」こそがグアンチャーレの脂の旨みと絶妙にマッチし、アマトリチャーナ特有のパンチのある味を生み出します。


ブカティーニとは何か


ブカティーニはローマで愛されるロングパスタで、太さが3.0mm以上あり、中心に穴が開いています。うどんに近い食感と太さを想像してもらえるとわかりやすいです。


「ブカティーニ」という名前はイタリア語で「穴」を意味する「buco(ブーコ)」に由来します。穴が開いていることで、内側と外側の両面でソースを絡められるため、グアンチャーレの旨みたっぷりのアマトリチャーナソースとの相性が抜群です。重みのあるソースを大量に纏う力があるため、ローマでは特に好まれているパスタです。


これは使えそうです。


サイゼリヤのアマトリチャーナはスパゲティでの提供でしたが、もし本格的に家で再現するのであれば、ブカティーニとペコリーノ・ロマーノを入手して試す価値は十分あります。ペコリーノ・ロマーノは輸入食材店や大型スーパーの輸入チーズコーナー、またはAmazonなどでも購入可能です。


アマトリチャーナとローマ三大パスタの材料・歴史を詳しく解説(pastasaucekitchen.com)


サイゼリヤのアマトリチャーナを家で再現する:辛さ調整つき本格レシピ

サイゼリヤのアマトリチャーナの味を自宅で再現するにはどうすればよいのでしょうか。以下に、辛さの調整も含めた実践的なレシピを紹介します。


材料(1人分)


| 食材 | 分量 | 代替品 |
|------|------|--------|
| スパゲティ(1.7〜2.0mm) | 100g | ブカティーニならさらに本格的 |
| パンチェッタまたはベーコン | 30〜40g | グアンチャーレがあれば最上 |
| トマトピューレまたはホールトマト缶 | 大さじ4〜5 | カットトマト缶でも可 |
| ペコリーノ・ロマーノ(なければパルミジャーノ) | 20〜30g | 粉チーズでも代用可 |
| 唐辛子 | 1本(辛さ調整で加減) | 完全に省いてもOK |
| 白ワイン | 30ml | 料理酒でも可 |
| オリーブオイル | 小さじ1 | — |
| 塩 | 少々 | — |


作り方のポイント


まず、パンチェッタ(またはベーコン)は弱火で炒めるのが大前提です。強火は厳禁です。弱火でじっくり5分以上かけて脂を引き出すことで、グアンチャーレに近い旨みの出汁が得られます。パンチェッタが汗をかいてきたら、白ワインを加えてアルコールを飛ばします。


次に唐辛子の扱いです。辛さが苦手な場合は、このタイミングで唐辛子1本を入れて30秒ほど炒めてから取り出してください。辛さをほとんど感じない状態で香りだけを楽しめます。辛さを楽しみたい方は唐辛子をそのまま入れ続けて、トマトと一緒に煮込みます。


トマトピューレを加えたら、水分をしっかり飛ばしながら煮詰めます。ここが味の深みを決定するステップです。水分が飛んでソースが凝縮されたら、茹でたパスタを入れて絡めます。


最後のポイントは、必ず火を止めてからペコリーノ・ロマーノを混ぜることです。チーズは火が入ると固まりやすいので、余熱だけで混ぜ合わせるのが原則です。もし固まってしまったらパスタの茹で汁を少量加えてなめらかに伸ばせます。


「辛さゼロでも成立する」が条件です。


サイゼリヤの2022年版アマトリチャーナのカロリーは741kcalと記録されています。参考にすると自宅で作る際もそれに近いボリューム感を意識できます。グアンチャーレの代わりにベーコンを使えば脂の量が抑えられ、カロリーを少し下げることも可能です。


アマトリチャーナはシンプルに見えて、実は食材の質と火加減に全てが宿っているパスタです。唐辛子の有無に関係なく、グアンチャーレ(またはパンチェッタ)の脂の扱いに集中することが、本場に近づくための一番の近道です。


料理人が実践する辛口アマトリチャーナの本格レシピとコツ(olivenote.jp)




生パスタの専門店のアマトリチャーナ (玉葱、燻製した豚肉、トマト) アマトリチャーナスパゲットーニ 約290g×2