グラッパはワインではなく、ワインを造った「ゴミ」から生まれたお酒です。
サイゼリヤのメニューにひっそりと存在する「食後酒グラッパ」。見かけたことはあっても、「いったい何の酒なんだろう?」と素通りしていた人も多いはずです。
グラッパとは、ワインを造る際に出るブドウの搾りかす(イタリア語で「ヴィナッチャ」)を原料に、蒸留して造るお酒です。ワインはブドウの果汁を発酵させますが、グラッパはその後に残る皮・種・茎の部分を使います。つまり、ワインが「果汁の酒」であるのに対して、グラッパは「廃棄物の再利用から生まれた酒」という、かなり意外な出自を持っています。
アルコール度数は30〜60度と非常に幅広く、サイゼリヤで提供されているものはアルコール40度です。ビール(約5度)の約8倍、ワイン(約12〜15度)の約3倍近い強さと考えると、その力強さがイメージできます。
つまりワインの副産物です。
重要なのは、「グラッパ」という名称を名乗るには、イタリア産のブドウを使い、かつイタリア国内で蒸留することが法律で定められているという点です。ワインのAOCのように、原産地の保護が徹底されており、フランスで同じ製法で作ると「マール」と呼ばれ、グラッパとは名乗れません。この法的な規定は1989年にEUの蒸留酒関連法律として確立されており、グラッパはれっきとした地理的保護指定を受けたプレミアムスピリッツなのです。
サイゼリヤはファミリーレストランでありながら、本場イタリアの食文化をコスパよく体験させてくれるお店です。その哲学を体現する存在の一つが、このグラッパだといえるでしょう。
参考:グラッパの法的な定義・製法について詳しく解説しています。
日本と海外の酒めぐり - グラッパの定義と製法(酒文化研究所)
グラッパの起源は中世ヨーロッパにまで遡ります。当時、ワインは上流階級の贅沢品であり、貧しい農民には手が届きませんでした。そこで生まれたのが、ワインの搾りかすに水を加えて蒸留した「グラッパ」です。長らく「農民の粗末な酒」として扱われていました。
過去は完全に安酒でした。
北イタリアを中心に、農民たちは冬の農作業前にグラッパを一杯飲んで体を温め、兵士は戦闘前に飲んで勇気を奮い立たせたとも言われています。歯の痛みに「鎮痛剤代わり」に使ったり、傷の消毒に用いたりするほど、薬のような存在でもありました。
転換点は1973年です。フリウリ地方のノニーノ蒸留所がブドウ品種を単一に絞った高品質グラッパを開発し、ヴェネツィアン・グラスのボトルに詰めて販売しました。それまでの厚手大瓶に入った庶民酒のイメージを根本から覆し、グラッパは一流レストランにも並ぶ高級スピリッツへと変貌を遂げました。
現在、高級品になると1本3万円を超えるものもあります(ノニーノのグラッパ・クリュ・モノヴィティーニョ・ピコリット 500mlで約38,000円)。サイゼリヤで飲めるグラッパ300円は、このような数百年の歴史と、ノニーノが切り拓いた品質革命の末に存在しているわけです。
これは意外ですね。
参考:グラッパの歴史と蒸留所ノニーノの革命について詳しく解説しています。
イタリアの蒸留酒グラッパはどんなお酒?楽しみ方・選び方・おすすめ解説(カモンテ)
グラッパには大きく2種類のタイプがあります。サイゼリヤで提供されているのは「若いグラッパ(グラッパ・ビアンカ)」と呼ばれるタイプです。
まず種類を整理します。
| 若いグラッパ(グラッパ・ビアンカ) | 熟成グラッパ(グラッパ・リゼルヴァ) | |
|---|---|---|
| 熟成方法 | ステンレスタンク・ガラスで6ヵ月以上 | オーク樽で12ヵ月〜数年以上 |
| 色合い | 無色透明 | 琥珀色〜黄金色 |
| 味わい | フレッシュ・スッキリ・ブドウの香り | まろやか・バニラ・ドライフルーツ系 |
| 適した飲み方 | ストレート・カクテル・エスプレッソ割り | ストレート・チョコレートとのペアリング |
| 価格帯(市販) | 3,000〜10,000円前後(700ml) | 10,000〜40,000円超(700ml) |
サイゼリヤのグラッパは無色透明で、ブドウ由来のフルーティーな香りとキレのあるクリーンな後味が特徴です。アルコール40度ということもあり、最初の一口は「強い!」という印象を受けるかもしれません。
ただ、これが「正しいグラッパの顔」です。
熟成グラッパはブランデーに近い色と味わいになりますが、初めてグラッパを試すならサイゼリヤの若いグラッパはむしろ入門として最適です。ブドウの素直な香りが感じやすく、グラッパ本来の個性を体験しやすいためです。
また、使われるブドウの品種によっても香りが大きく異なります。モスカートやマルヴァジーアなどのアロマティック品種から作られるグラッパは、特に花やフルーツの香りが豊かで飲みやすいと評判です。
参考:グラッパの種類・選び方を専門的に解説しています。
サイゼリヤでグラッパを注文すると、30mlが300円で提供されます。ワンショットグラスにたっぷり注がれた透明な液体、これをどう楽しむかがポイントです。
いきなりストレートで飲み干すのは少し勇気がいる、という方も多いでしょう。そこで有効なのがドリンクバーとの組み合わせです。グラッパ300円+ドリンクバー182円(税込200円)のセット活用が、SNSでも話題になったスマートな飲み方です。
飲み方のアレンジを整理します。
特に「カフェ・コレット」はイタリア語で「修正されたコーヒー」を意味します。エスプレッソにほんのわずかなグラッパを混ぜて飲む飲み方で、イタリアの食後風景では日常的な光景です。サイゼリヤのドリンクバーにエスプレッソがあれば、本場に近いスタイルを体験できます。
これは使えそうです。
また、「レゼンティン」という飲み方も面白いです。エスプレッソを飲み干した後、砂糖が底に残ったカップにグラッパを注いで飲むスタイルで、ほのかにコーヒー風味がついたグラッパが楽しめます。サイゼリヤならドリンクバーで気軽に試せます。
アルコール40度という強さが気になる方は、まずトニックウォーター割りやエスプレッソ合わせから入ると、負担なくグラッパの世界に踏み込めます。
参考:サイゼリヤでのグラッパの実際の飲み方と感想が詳しく掲載されています。
サイゼリヤで噂のお酒が復活!「グラッパ」のおすすめの飲み方(macaroni)
サイゼリヤのメニューには「食後酒グラッパ」と明記されています。なぜグラッパは「食後に飲む酒」なのか、気になった方もいるのではないでしょうか。
食後酒は消化を助けるためと言われています。
アルコール度数の高いお酒には、胃液の分泌を促す作用があります。食事で満たされた胃が重く感じる場面で、グラッパを一口飲むことで胃液が活性化し、消化が進みやすくなるという考え方です。これが「ディジェスティーヴォ(食後酒)」としてイタリア料理文化に定着した理由のひとつです。
ただし一点補足が必要です。近年の研究では「アルコールが消化を直接助ける」というより、「食後の満腹感が和らぎ、リラックスできる」という心理的・習慣的な効果が大きいとも指摘されています。
一方で、グラッパの歴史を振り返ると、イタリア北部の農民たちはグラッパを風邪薬代わりや傷の消毒薬として用いていたという記録があります。現代の薬学的見地からは完全に正しいとは言えませんが、アルコール度数40度以上のグラッパが殺菌・消毒作用を持つことは事実です。
結論は「食後のリラックス酒」です。
また、イタリアのトラットリアや家庭料理の店では、食事の会計後にオーナーが「サービスでどうぞ」とグラッパを持ってくることも珍しくないそうです。グラッパはただの酒ではなく、イタリア人にとって「歓迎と感謝のしるし」という文化的な意味合いも持っています。
サイゼリヤで食後にグラッパを1杯頼む行為は、単なる飲み物選びではなく、イタリアの食文化をなぞる体験ともいえます。ペペロンチーノやアランチーニを楽しんだ後、最後の一杯としてグラッパを傾けることで、ファミリーレストランがほんの少しイタリアのトラットリアに近づく感覚があります。
参考:グラッパが食後酒として愛されてきた文化的背景と消化促進の関係を解説しています。
グラッパとは?飲み方からおすすめのグラッパまで徹底解説!(しあわせワイン倶楽部)

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