競走馬「パスティエーラ」の産駒は、2025年の北海道セレクトセールで4,400万円の値をつけています。
「パスティエーラ」という名前を聞いて、イタリアのお菓子を思い浮かべたサイゼリヤ好きのあなたは、ある意味で正解です。ただ、競馬の世界でも全く同じ名前の馬が存在します。それが、2015年2月2日生まれの牝馬・パスティエーラ(Pastiera)です。
この馬のプロフィールは、競馬ファンならうなるような豪華さです。
| 項目 | 内容 |
|------|------|
| 生年月日 | 2015年2月2日 |
| 性別・毛色 | 牝・鹿毛 |
| 父 | キングカメハメハ |
| 母 | パストフォリア(母父:シンボリクリスエス) |
| 生産者 | ノーザンファーム(北海道安平町) |
| 馬主 | 有限会社サンデーレーシング |
| 調教師 | 藤沢和雄(美浦) |
| 通算成績 | 2戦0勝 [0-0-1-1] |
| 総獲得賞金 | 180万円 |
父のキングカメハメハは、日本ダービーや NHKマイルCを制した名馬中の名馬で、種牡馬としても数多くのGⅠ馬を輩出しています。調教師の藤沢和雄師はJRA通算1569勝を誇る名伯楽です。これだけの布陣で競走馬登録されながら、2戦0勝で2018年に引退・繁殖入りしています。
つまり、パスティエーラは現役時代こそ目立った成績は残せませんでしたが、繁殖牝馬として「その後の物語」を作っています。これがとても面白いのです。
▶ netkeiba:パスティエーラの競走成績・血統データ(ノーザンファーム生産、キングカメハメハ産駒の詳細情報)
現役成績は2戦0勝だったパスティエーラですが、繁殖入り後にその真価が発揮され始めています。これが驚きです。
2024年3月3日に生まれた「パスティエーラの2024」(父:イクイノックス)は、2025年の北海道セレクトセールで4,400万円という高値で取引されました。父イクイノックスは2023年の年度代表馬で、その産駒はデビュー前から高い評価を受けています。セレクトセールはサラブレッドの1歳・当歳セリの中でも最高峰のひとつで、国内トップの馬産家や馬主が集まる場です。4,400万円という値段は、競走成績ゼロの母から生まれた馬としては非常に高い評価と言えます。
また、2025年3月6日生まれの「パスティエーラの2025」も同年のセレクトセールに上場され、こちらも4,400万円の取引価格がつけられています。
2戦0勝という成績の馬の産駒が、なぜここまで高額評価されるのでしょうか? その理由は血統にあります。
母パスティエーラの血統には、父キングカメハメハ、母父シンボリクリスエスというトップクラスの名が並んでいます。さらにパスティエーラが属する牝系(母系)は「サブライムアンセム」「インテグリフォリア」などの近親馬を含む良血牝系です。競馬では「競走成績よりも血統が繁殖評価を左右する」ことがあり、パスティエーラはまさにそのケースです。
▶ JBIS:パスティエーラの血統・産駒情報(日本サラブレッド登録・血統詳細の公式データ)
では、なぜこの馬の名前が「パスティエーラ」なのでしょうか。馬名はイタリア語で「ナポリの伝統的な焼き菓子」を意味します。これは正式には「パスティエーラ・ナポレターナ」と呼ばれる、ナポリを代表するタルト菓子です。
このお菓子の特徴は非常にユニークです。
- 🧀 リコッタチーズ:クリーミーで優しい甘みのベース素材
- 🌾 茹でた小麦(グラーノ・コット):ぷちぷちとした独特の食感を生む主役
- 🌸 オレンジフラワーウォーター:蒸留オレンジの花から作る華やかな香料
- 🎂 パスタ・フロッラ:サクサクほろほろのタルト生地
リコッタチーズと小麦粒が一緒に入るという、日本人の感覚では少し想像しにくい組み合わせです。初めて食べる人は「えっ、ごつごつするの?」と驚くことが多いのですが、これが癖になる食感なのです。
パスティエーラは本来、キリストの復活を祝うイースター(パスクア)に食べる季節の菓子です。ただし現在はナポリを中心に年中食べられています。卵は「再生」の象徴、小麦は「豊穣」の象徴とされ、一口食べるだけでナポリの文化と歴史の深さが伝わってくるお菓子です。
競走馬にこの名前をつけた背景には、生産牧場であるノーザンファームがイタリア語の洗練された名前を選ぶ慣習があります。サンデーレーシングが所有する馬には、美しいイタリア語名がつくことが多い傾向があります。
▶ ITALIANITY:南イタリア復活祭のお菓子「パスティエラ」の詳細(起源・材料・文化的背景の解説記事)
ここで、サイゼリヤ好きにとって特に気になる話をしましょう。
サイゼリヤのパスタは、ナポリのグラニャーノという地域にある1795年創業の老舗メーカーから直輸入しています。グラニャーノはナポリ近郊に位置する「パスタ発祥の地」とも呼ばれる街で、その製法はデュラム小麦100%を低温でゆっくり乾燥させる伝統的なものです。つまり、サイゼリヤのパスタにはナポリの伝統技術が直接使われています。
サイゼリヤが年間で消費するパスタ量は国内だけで1万トン超、提供食数は年間約5千万食にのぼります。これだけの量をナポリから調達している事実は、サイゼリヤとナポリのただならぬ関係を示しています。
パスティエーラというお菓子が生まれた街・ナポリと、サイゼリヤのパスタが生まれた街・ナポリは、同じ場所です。つまり、ナポリはサイゼリヤ好きにとっても競馬ファンにとっても、同じ「源泉」にあたります。
この視点で見ると、競走馬パスティエーラの馬名は単なる飾りではなく、ナポリという食の文化圏を象徴した名前と言えます。サイゼリヤで毎日食べているパスタと、競馬場で走る牝馬パスティエーラは、ナポリというキーワードでつながっています。
▶ サイゼリヤ公式:パスタへのこだわり(ナポリ・グラニャーノの老舗メーカーとの取り組み詳細)
実は、日本の競馬界にはイタリア語名の馬が非常に多く存在します。これはサイゼリヤ好きにとって、競馬への新しい入口になりうる話です。
イタリア語が馬名に多い理由はいくつかあります。まず、音の響きが美しく、カタカナ表記との相性がよいこと。次に、イタリア語には食・音楽・芸術など文化的に豊かな語彙が多く、馬の特徴や血統に合わせた名前を付けやすいこと。そして、競馬の名門・ノーザンファームやサンデーレーシングが所有・生産する馬にイタリア語名が多く使われていることが大きな理由です。
いくつか具体例を挙げましょう。
- 🏆 タスティエーラ(Tastiera):イタリア語で「(楽器の)キーボード」。2023年日本ダービー馬で、2025年香港クイーンエリザベスⅡ世カップ優勝馬
- 🎵 パスティエーラ(Pastiera):イタリア語でナポリの伝統菓子の名
- 🍊 アヴェントゥリーナ(Avventurina):イタリア語で「砂金石」を意味する
- 🌊 アックアアルタ(Acqua alta):イタリア語で「高潮」を意味する(ヴェネツィアの現象)
サイゼリヤのメニューにはイタリア語やイタリア文化に由来する名前がたくさんあります。「ミラノ風ドリア」「ペペロンチーノ」「アマトリチャーナ」……これらの名前に親しみを感じるサイゼリヤ好きなら、競走馬の名前を追うだけでも楽しめるはずです。
競馬のレース前に出走馬の名前をチェックして「あっ、これイタリア語だ」「サイゼのメニューと似た雰囲気だ」と感じるのは、なかなか面白い楽しみ方です。競馬場やウインズ(場外馬券場)に行かなくても、JRAのサイトやnetkeibaで馬名とその意味を調べるだけで、イタリア語とナポリ文化の世界が広がっていきます。
▶ はてなブログ:馬名でイタリア語単語を覚える(JRA・地方登録馬のイタリア語馬名一覧と意味解説)
通常、競走馬は戦績が良いほど繁殖評価が高まります。現役時代に重賞を勝っていれば種牡馬・繁殖牝馬としての価値は自然と上がります。これが一般的な常識です。
しかしパスティエーラの場合、2戦0勝という「名前負け」に見える成績にもかかわらず、その産駒が4,400万円で落札されています。これは「名前負け」ではなく、血統の力と牝系の底力によるものですが、このストーリーは非常に示唆に富んでいます。
現役時代に目立てなかったが、次世代でその価値が花開く——これは、パスティエーラというお菓子の歴史とも少し重なります。パスティエーラは年に1回、イースターのためだけに作られる季節限定菓子でした。長い時間をかけて熟成させ、焼いた翌日以降に本当の味が出てくるお菓子です。現役時代より繁殖になって輝く馬の姿は、まるで「翌日以降に美味しくなる」パスティエーラの特性と重なるような気がして、とても面白いたとえになります。
競馬に興味を持ち始めたサイゼリヤ好きの方には、こういった視点で馬を追ってみることをおすすめします。GⅠを勝った有名馬だけが競馬の主役ではありません。2戦0勝の繁殖牝馬が、億を超える産駒を産む——そんなドラマが、馬一頭一頭の名前の裏に隠れています。
競馬デビューのきっかけとして、まずはnetkeibaやJRA公式サイトで「パスティエーラ」と検索してみてください。血統表をたどるだけで、イタリアの文化と日本競馬がつながる景色が見えてきます。
▶ JBIS:パスティエーラの産駒一覧(現在の繁殖成績や産駒のセリ取引価格まで確認できる公式情報)