サイゼリアのチョコレートケーキに使われるカカオの約2割は、あなたが食べる前にタコラディ港を通過している。
「セコンディ タコラディ」という名前を初めて聞いた人は、何語なのか、どこの地名なのかピンとこないかもしれません。これは西アフリカのガーナ共和国に実在する都市の名前で、正式には「セコンディ=タコラディ(Sekondi-Takoradi)」と表記します。
ガーナはコートジボワール、トーゴ、ブルキナファソに隣接する国で、大西洋に面したギニア湾の沿岸に位置しています。セコンディ タコラディはその南西部、ウェスタン州(西部州)の州都です。アクラと並ぶガーナの主要都市のひとつで、2012年時点の人口は約44万5,000人。日本で言えば静岡市や岡山市に近い規模感の都市です。
「双子都市」と呼ばれるのは、セコンディとタコラディという2つの街が合併してできた経緯があるからです。
もともとセコンディは商業・住宅エリアとして発展した街で、タコラディはそこから約10kmほど東方に位置する港湾・工業エリアとして発展しました。東京ドームに例えれば、新宿から渋谷ほどの距離感で2つの個性的な街が並んでいるイメージです。1946年にこの2都市が合併し、現在のセコンディ タコラディ市が誕生しました。
市の主要産業は木材、カカオ加工、合板、造船、港湾、漁業など多岐にわたります。結論は、港と産業が都市の背骨ということです。内陸部から伸びる鉄道がセコンディまで通じており、農産品や鉱産物の輸送ルートとして物流の要所になっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | セコンディ=タコラディ(Sekondi-Takoradi) |
| 所在国 | ガーナ共和国 |
| 所属州 | ウェスタン州(西部州) |
| 人口 | 約44.5万人(2012年) |
| 合併年 | 1946年 |
| 主要産業 | 港湾、カカオ加工、木材、石油、造船、漁業 |
セコンディ・タコラディについての基本情報(Wikipediaより)
この都市の歴史は、17世紀にまでさかのぼります。意外ですね。
ヨーロッパ列強が「黄金海岸(ゴールドコースト)」と呼んだ西アフリカの海岸沿いには、オランダ、スウェーデン、イギリスが次々に砦(要塞)を建設しました。セコンディとタコラディの周辺も例外ではなく、当時の植民地争いの最前線となった場所です。奴隷貿易の中継地としても使われた歴史を持ち、現在もその痕跡が建築物として残っています。
近代的な発展のきっかけは1903年に訪れました。鉱物と木材を積み出すために、内陸部のクマシ(ガーナ最大のカカオ産地)とセコンディを結ぶ鉄道が開通したのです。これが都市の骨格を形成し、物流拠点としての地位を固めました。さらに1928年、タコラディにガーナ初の深水港が開かれます。深水港とは水深の深い岸壁を持つ港のことで、大型の貨物船が直接接岸できる施設です。この港の誕生により、タコラディは西アフリカ有数の貿易港へと成長しました。
第二次世界大戦中には、タコラディ空港がイギリス軍のエジプトへの出撃拠点として使われるなど、軍事的にも重要な役割を果たしました。
そして2007年、都市の命運を大きく変える出来事が起きます。セコンディ タコラディの沖合いに「ジュビリー油田」と名付けられた大規模な海底油田が発見されたのです。2010年から商業生産が開始され、石油収入がガーナの経済を大きく押し上げました。ガーナの経済成長率が突如として高まった背景には、このタコラディ沖の石油があります。それほど大きな発見でした。
現在のセコンディ タコラディは「石油都市」としても世界に知られており、海外からの投資や外国企業の進出が続いています。歴史の重みと最先端のエネルギー産業が共存する、アフリカでも稀有な都市です。
コトバンクによるセコンディ タコラディの解説(歴史・地理情報)
サイゼリア好きならすでにご存じの通り、サイゼリアにはチョコレートケーキやティラミス クラシコ、さらにはイタリア直輸入のチョコレートドルチェ「ボネ(Bonet)」など、カカオを使ったデザートが充実しています。そのカカオの原料をたどると、セコンディ タコラディが見えてきます。
日本がカカオ豆を輸入する際、その約7割がガーナ産です。これは国内向けチョコレートの主力原料がほぼガーナ由来であることを意味します。そしてガーナ産カカオの主要輸出港こそが、タコラディ港です。世界のカカオ生産量において、ガーナはコートジボワールに次ぐ世界第2位。内陸部のアシャンティ州やウェスタン州で収穫されたカカオ豆は鉄道やトラックでタコラディ港へ運ばれ、そこから船で世界中へと旅立ちます。
これは使えそうです。サイゼリアのデザートを食べる視点が少し変わってきます。
イタリアのピエモンテ州発祥のチョコレートプリン「ボネ」はアマレッティを練り込んだほろ苦いドルチェで、一部のサイゼリア店舗でしか出会えない希少なメニューです。このデザートのカカオがガーナ産であれば、タコラディ港を出発した豆がイタリアで加工され、日本の食卓に届いたことになります。距離にして約1万4,000kmの旅、東京から地球を3分の1周した先にある港の話なのです。
ガーナとコートジボワールの2国だけで世界のカカオ生産の約6割以上を占めており、両国の農家の総数は数百万人規模と言われています。その農業の恩恵を受ける形で、私たちはサイゼリアで300円台のデザートを楽しめている、というのが現実の構造です。
カカオの産地を知ることで、次にサイゼリアのデザートを注文するとき、少しだけ深みが増すはずです。
WWFジャパン:日本のカカオ輸入とガーナの関係についての解説記事
セコンディ タコラディは単なる工業都市ではありません。観光的な魅力も豊富に持っています。
まず注目したいのが、植民地時代の歴史的建造物です。タコラディ城(Fort Orange)はオランダ人によって17世紀に建設された砦で、当時の植民地支配と奴隷貿易の歴史を今に伝えています。近郊には世界遺産に登録されているエルミナ城やケープ・コースト城があり、セコンディ タコラディはそれらを訪れる際の観光拠点としても機能しています。歴史に関心のある旅行者にとっては欠かせない拠点です。
スポーツファンには、セコンディ=タコラディ・スタジアムが有名です。地元クラブ「セコンディFC」のホームスタジアムとして知られ、2008年には「アフリカネイションズカップ2008」の試合会場にもなりました。これはアフリカ版UEFAチャンピオンズリーグに相当する大会で、大陸最高峰のサッカーの祭典です。
ビーチも見逃せません。ギニア湾に面した海岸線には美しいビーチが点在し、「B' Family Beach Club」などの施設も人気です。年間を通じて気温が23〜31℃程度で安定しており、日本の夏と似た温暖な気候が一年中続きます。
さらに、市内には自然史博物館「ビサアベルワミュージアム(Bisa Aberwa Museum)」もあり、ガーナの自然・文化・歴史を体系的に学べます。
文化的には、ウェスタン州の人々(ンゼマ族、ワッサ族、アハンタ族など)の伝統が色濃く残り、焼き魚の「アシャケ」などの郷土料理も楽しめます。カカオの産地として知られるウェスタン州だからこそ、新鮮なカカオの実を使ったドリンクやフードを味わえるのも魅力のひとつです。
トリップアドバイザー:セコンディ タコラディの観光スポット一覧
サイゼリア好きの中には、「セコンド(Secondo)」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。イタリアンのフルコースにおける「セコンド・ピアット(Secondo Piatto)」とは、コースの中でも「第二のメイン料理」にあたる肉や魚の一皿を指します。「セコンディ タコラディ」の「セコンディ」とはスペルも発音も異なりますが、サイゼリアとの接点として面白い偶然の一致です。
実際にサイゼリアでイタリアンフルコースを楽しむブームが一部で起きており、SNSでは「サイゼリアでコース料理を体験した」という投稿が数多くあります。その構成を簡単に整理するとこうなります。
1人あたり2,000円前後でフルコース体験ができるのは、まさにサイゼリアならでは。これが基本です。
ここで「セコンド・ピアット」として辛味チキンやムール貝を選ぶ場合、その食材の一部はアフリカ産であることも少なくありません。ムール貝はヨーロッパ産が多いですが、チョコレートデザートに使われるカカオはガーナ産が主流です。つまり「セコンド(タコラディ)」と「セコンド(ピアット)」という2つの「セコンド」が、サイゼリアの食卓の上でひとつにつながっています。偶然の一致とはいえ、意外ですね。
サイゼリアのデザートメニューには現在、カカオ系のものが複数あります。中でも「ボネ(Bonet)」はイタリアのピエモンテ州トリノ発祥の伝統菓子で、アーモンドと卵白の焼き菓子「アマレッティ」を練り込んだ大人味のチョコレートプリンです。全店舗ではなく一部限定の提供なので、見つけたらラッキーな一品と言えます。こんな知識があると注文のひと手間が楽しくなります。
サイゼリアでコースを楽しむ際は、ワインとの組み合わせも重要です。白ワインは魚介系料理に、赤ワインは肉料理やチーズに合わせるのが基本。デザートにはデザートワインや食後のエスプレッソを合わせると、より本場イタリアン的な雰囲気になります。
セコンディ タコラディがこれまで日本であまり語られなかった理由のひとつは、「ガーナ=チョコレートの原料産地」という認識はあっても、その具体的な積み出し港や加工都市まで想像が及ばなかったからではないでしょうか。いいことですね、意識が変わるタイミングが来ています。
世界的に「カカオのサステナビリティ」への関心が高まる中、タコラディ港周辺ではカカオ加工の工業化が進んでいます。ガーナのカカオ加工能力は年間約45万トンと推計されており(スタンビック銀行調べ)、生豆のまま輸出するだけでなく、バターやパウダーなど半加工品の形で輸出する比率も増えてきました。これはカカオ農家の収入を上げ、付加価値をガーナ国内に残すための重要な動きです。
ガーナのカカオ農家の生活水準についても知っておくべきことがあります。2022年時点での標準的な家族5人世帯の生活所得基準額は約298米ドル(約4万4,000円)とされていますが、農家の約3分の2がその水準に達していないというデータもあります(ワーゲニンゲン大学、2021年)。私たちがサイゼリアで300円台のデザートを楽しめる背景には、こうした生産現場の厳しい実情があります。厳しいところですね。
一方で、国際機関や企業による支援も進んでいます。JICAはセコンディ港での水産振興支援を行っており、地元の漁業コミュニティの生計向上に取り組んでいます。またFabLab(ファブラボ)と呼ばれる地域のものづくり拠点がセコンディ タコラディにも設置されており、テクノロジーを使った地域課題解決への挑戦が続いています。
サイゼリアが好きであれば、デザートを注文するとき少しだけ立ち止まって「この一口の旅の起点はどこか」と考えてみると面白いかもしれません。タコラディ港で積み出されたカカオ豆が、イタリアで加工され、日本のサイゼリアの食卓に届く。その距離は東京からタコラディまで直線で約1万4,000km、地球をほぼ3分の1周する距離です。はがき1枚の横幅(10cm)を基準にすれば、地球をぐるりと回ってきた旅のスケールが想像できます。
300円台のデザートに込められた壮大な旅を知ることが、次の一皿をもっと豊かにしてくれるはずです。
認定NPO法人ACE:ガーナのカカオ生産地と児童労働・農家の生活実態についての詳細情報
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