アマーロ酒はお年寄りの飲み物だと思っていませんか?
アマーロ(Amaro)とは、イタリア語で「苦い」を意味する言葉です。ひとつの商品名ではなく、ハーブ・スパイス・樹皮・根・柑橘の皮などをアルコールに浸漬し、砂糖やカラメルで甘みを加えて仕上げたイタリア産ビター系リキュール全体の総称を指します。
日本で例えるなら「養命酒」に近い存在感を持っています。薬草をアルコールに漬け込んで健康効果を期待するという発想は、実は東西を超えて共通しているのです。
アルコール度数は銘柄によってかなり幅があり、15度前後の軽めのものから40度を超えるものまで存在します。一般的には20〜30度前後のものが主流で、ウイスキーほど強くなく、ビールや日本酒よりやや高めという位置づけです。
苦いというイメージから敬遠されがちですが、実際には「甘苦い(にがあまい)」複雑な味わいが魅力です。つまり、ただ苦いだけの酒ではありません。
イタリア全土には数千種類ものアマーロが存在するとも言われており、地域ごとに使われるボタニカルが異なります。北イタリアのアルプスでとれる高山植物を使ったもの、シチリアの柑橘類を使ったもの、アーティチョーク(洋アザミ)を主役にしたものなど、一口にアマーロといっても味わいは千差万別です。
サイゼリヤのようなイタリアンレストランで食事を楽しんだあと、「何か締めの一杯が欲しいな」と感じたことはないでしょうか。そのまさに最適解がアマーロです。
アマーロとは何か?その役割と起源を辿る(Bar BenFiddich 鹿山博康)
この記事では、バーテンダー目線でアマーロの本質的な役割と歴史的背景が詳しく解説されています。
アマーロの起源は中世ヨーロッパの修道院にまでさかのぼります。もともとは修道士たちが薬草の知識を活かして「万病に効く霊薬(エリクサー)」として作ったものでした。その目的は嗜好品ではなく、消化促進・滋養強壮のための純粋な「薬」だったのです。これが面白い点で、アマーロはお酒として生まれたわけではありません。
15世紀の大航海時代になると、世界各地からさまざまなスパイスや植物が手に入るようになり、修道士たちのレシピはどんどん洗練されていきました。その後、フランス革命によって修道院が解散させられた際、職を失った修道士たちが自分たちの「秘薬の知識」を持って民間に出たことが、アマーロが大衆に広まる転機となりました。
19世紀の産業革命期に入ると、修道士のレシピをもとにした起業家たちがイタリア各地で工業的なアマーロ生産を開始します。この時代に現在でも有名なブランドの多くが誕生しています。フェルネット・ブランカが創業したのは1845年のことです。
現代においては、2000年代以降のアメリカ発クラフトカクテルブームの中でアマーロが再評価されました。かつては「おじいちゃんおばあちゃんが飲む古臭い酒」として一時は衰退産業になっていたイタリア国内でも、世界的な人気を受けて逆輸入的にブームが再燃しています。現在では「クラフトジンに続く次のトレンド」として世界中のバーテンダーと美食家から熱い視線を集めています。
歴史が長い分、レシピは各ブランドの最高機密。フェルネット・ブランカが使用する27種類のハーブのうち、公開されているのは一部のみです。これが意外ですね。
サイゼリヤのようなイタリア料理店で食事をしている私たちも、実はその長い歴史の延長線上にいます。修道士が作った薬草酒が形を変えて世界に広まり、今ここにあるというストーリーはロマンがあります。
アマーロの歴史について。イタリアの苦味酒。(note / Bar BenFiddich)
修道院からの歴史的変遷をバーテンダーの専門的視点で読み解いた記事です。アマーロという呼称の誕生についても詳しく書かれています。
アマーロには厳密な分類基準はなく、ブランドごとの個性が非常に大きいです。ただ大まかな傾向を知っておくと、初めてのボトルを選ぶときに役立ちます。代表的な5系統を知っておけばOKです。
まず最も親しみやすいのが「ミディアム系」です。苦味と甘みのバランスが良く、柑橘やフローラルな香りが特徴。代表格はアマーロ・モンテネグロ(度数23度)とアヴェルナ(度数29〜32度)で、アマーロ入門者に最適です。
次に知名度抜群なのが「カンパリ系(ゲンチアナ軽め系)」です。あの鮮やかな赤色の「カンパリ(度数20〜25度)」もアマーロのひとつで、ビタースイートな風味が特徴。「えっ、カンパリってアマーロだったの?」という反応が多い銘柄でもあります。意外ですね。
「フェルネット系」は最もドライで苦味が際立つ上級者向けタイプです。代表はフェルネット・ブランカ(度数39度)で、「世界一苦い酒」とも呼ばれます。27種類のハーブを使用し、ミントのような清涼感と強烈な苦味が特徴です。
「アルピーノ系(アルプス系)」はイタリア北部のアルプス地方生まれで、松やモミの木など高山植物を使った森のような香りが特徴です。代表はブラウリオ(度数21.5度)。
「カルチョーフィ系」はアーティチョーク(洋アザミ)を主原料にした独特の系統で、チナール(度数16.5度)が有名です。野菜由来のコクがあり、料理との相性が抜群です。
| 系統 | 度数目安 | 代表銘柄 | 味わいの特徴 |
|------|---------|---------|------------|
| ミディアム | 23〜32度 | モンテネグロ、アヴェルナ | 甘苦バランス良好、入門向け |
| カンパリ系 | 20〜25度 | カンパリ、アペロール | 赤色系、ビタースイート |
| フェルネット系 | 39〜45度 | フェルネット・ブランカ | 強烈な苦味+ミント清涼感 |
| アルピーノ系 | 20〜30度 | ブラウリオ | 森の香り、高山植物系 |
| カルチョーフィ系 | 15〜17度 | チナール | アーティチョーク、野菜系 |
サイゼリヤでの食事後に試すなら、まずミディアム系のモンテネグロかアヴェルナから入るのがおすすめです。苦味が控えめで華やかな香りがあるため、イタリアンの余韻を壊さずに楽しめます。
【アマーロとは?】イタリア生まれの「苦旨」薬草酒。その種類と飲み方(BiGLOBE)
各銘柄の特徴を比較した詳細な解説記事です。初心者がどのボトルを選ぶかの参考になります。
アマーロの飲み方に「絶対の正解」はありません。ただ、場面ごとに試してほしいスタイルがあります。飲み方が基本です。
ストレート・オンザロックは最もクラシックな食後酒スタイルです。食事の締めに小さなグラスで30〜45mlほどを、ゆっくりと時間をかけて味わいます。本場イタリアでは、マイナス20度にまで冷やした冷凍庫からそのままショットグラスに注いで飲む流儀もあります。キンキンに冷えることで苦味のエッジが和らぎ、香りだけが立つため、非常に飲みやすくなります。
アマーロ・ソーダ割りは食前・食中にも対応できる爽快スタイルです。基本の比率はアマーロ45ml:炭酸水90〜135ml(1:2〜1:3程度)が目安。レモンやオレンジのスライスを添えると、柑橘の香りがアマーロの苦味をより引き立てます。これは使えそうです。苦味が和らぐため、アマーロ初心者が最初に試すには最適の飲み方です。
ホット割りは寒い季節の癒やし系スタイルで、アマーロをお湯で割りレモンの皮を浮かべます。湯気とともにハーブの香りが広がり、まるで「飲む漢方薬」のような温かさです。身体の内側からほっこりと温まる感覚は格別です。
カクテルへの応用も広がっています。有名なのがペーパープレーン(Paper Plane)というモダンカクテルで、バーボン・アペロール・アマーロ・ノニーノ・レモンジュースをそれぞれ等量(各22.5ml)でシェイクするだけのシンプルなレシピです。2007年にオーストラリア人バーテンダーのサム・ロスが考案し、今では世界中のバーで定番の一杯になっています。甘酸っぱくてビターな味わいが絶妙で、アマーロ入門カクテルとして特におすすめです。
またネグローニも有名で、カンパリ(アマーロの一種)・ジン・スイートベルモットを等量混ぜたカクテルです。サイゼリヤの料理と合わせた食前酒として機能する一杯で、フィレンツェのネグローニ伯爵が考案したとされるイタリア生まれのカクテルという点でも、サイゼリヤ好きには相性が良いといえます。
サイゼリヤのあのコスパと食事の豊かさは多くのファンを惹きつけていますが、実はアマーロとの組み合わせという観点で見ると、サイゼリヤの料理は非常に相性が良いのです。その理由は本場イタリアの食文化にあります。
イタリアでは「食の流れ(食前・食中・食後)」がひとつのセットとして考えられており、食後酒(ディジェスティーヴォ)を飲む習慣は日常の一部です。たっぷり食べたあとにアマーロを一杯飲んで胃を落ち着かせるのは、イタリア人にとっては当たり前のルーティンです。
サイゼリヤで例えば「エスカルゴのオーブン焼き」「辛味チキン」「ミラノ風ドリア」など、しっかりとした風味のある料理を楽しんだあと、アマーロを一杯加えると食後感が変わります。脂っこさがすっきりとリセットされ、食事全体のバランスが整う感覚です。
おすすめの組み合わせを具体的に提案すると以下のとおりです。
家でサイゼリヤテイクアウトを楽しむ場合でも同様です。近年はテイクアウトメニューも充実しているサイゼリヤなので、自宅でアマーロを用意しておくだけで「本場イタリアの食後スタイル」が完成します。
アマーロはスーパーよりも酒専門店や輸入食品店での取り扱いが多いですが、アマゾンや楽天でも購入可能です。まず試すなら1本1,500〜2,500円程度で購入できるアマーロ・モンテネグロ(700ml)かアヴェルナ(700ml)を選ぶとよいでしょう。コスパを重視するサイゼリヤ好きな方にとっても、ボトル一本の価格でバー数回分のアマーロが楽しめる点は魅力的です。
なお、アマーロはハーブ系リキュールであるため、飲みすぎには注意が必要です。あくまで食後の締めとして30〜60ml程度を楽しむのが基本です。健康効果を期待しすぎるのも禁物ですが、本場イタリアで何百年も食後酒として飲まれてきたという事実は、それなりの裏付けといえます。
イタリアアマーロ(Amaro)の分類と種類(Bar BenFiddich 鹿山博康)
フェルネット系・アルピーノ系など各タイプの詳細な分類を専門家が解説。自分に合う系統を探す際に役立ちます。