アルボリオ米は洗って使うと、かえってまずくなります。
アルボリオ米はイタリア北部、ポー川流域のヴェルチェッリ県アルボーリオという小さな町を名前の由来にもつ短粒米です。ロンバルディア州やピエモンテ州を中心とする一帯は、アルプス山脈の豊富な雪解け水と肥沃な沖積平野が広がり、ヨーロッパ最大の米産地として知られています。ポー川流域だけで約22万ヘクタール以上の水田が広がり、4,000以上の農場でアルボリオ米やカルナローリ米などが栽培されています。
粒の大きさは日本のコシヒカリと比べて1.3〜1.5倍ほどあります。形はやや丸みを帯びていて、白くてはっきりとした芯があるのが特徴です。分類上はジャポニカ米(短粒種)の一種で、遠い祖先は日本米と同じです。つまりまったく異質な米ではなく、日本米の「遠い親戚」ともいえます。
イタリアの米文化の歴史は深く、15世紀ごろにアラブ商人を通じて持ち込まれたのが始まりとされています。当初は修道院や貴族の食卓でしか食べられない高級食材でしたが、北イタリアの水田開発が進むにつれ庶民に広まり、現在のリゾット文化の土台となりました。500年以上続く稲作の歴史が、今もアルボリオ米という品種の形で受け継がれています。
サイゼリアのリゾットを「あの味」にしている背景には、こうした長い歴史と産地の風土があります。これは覚えておくと損はありません。
| 品種 | 粒の大きさ | クリーミー度 | 向いている料理 |
|---|---|---|---|
| アルボリオ | 中〜大 | ★★★★☆ | クリーミーリゾット・スープ |
| カルナローリ | 大 | ★★★☆☆ | 万能リゾット・アランチーニ |
| ヴィアローネ・ナーノ | 小〜中 | ★★★☆☆ | 魚介リゾット・スープ仕立て |
| 日本の短粒米(コシヒカリ) | 小 | ★★☆☆☆ | 和食・寿司・雑炊 |
アルボリオ米が特別な理由は、その見た目や産地だけにあるのではありません。核心は「デンプンの構造」にあります。
お米のデンプンには「アミロース」と「アミロペクチン」の2種類があります。アミロースは水に溶けにくく、サラっとした食感を生む成分です。一方、アミロペクチンは粘りを生む成分で、水を加えて熱すると溶けて周囲にとろみをもたらします。日本のうるち米はおよそアミロース20%・アミロペクチン80%という構成です。
アルボリオ米は、外層部(米粒の表面に近い部分)にアミロペクチンを豊富に含んでいます。しかも粒が大きい分、その絶対量も多い。調理中にかき混ぜると外層のアミロペクチンが少しずつ溶け出し、スープと混ざり合って「クリーミーなソース」に変わっていきます。これがリゾット特有の「とろり」とした食感の正体です。
一方で粒の中心部(芯)にはしっかりとした構造が残り、噛んだときのプチッとした食感が生まれます。これがイタリア料理でいう「アルデンテ」です。外はとろける・中は程よく固い、この対比こそがアルボリオ米を使うリゾットの醍醐味です。
日本のコシヒカリで同じ工程を踏んでも、全体が均一に柔らかくなりすぎて「リゾット」ではなく「おかゆ」になってしまいます。アルボリオ米の粒構造は、まさにリゾットのために最適化されているといえます。これは使えそうです。
「お米を使うなら洗うのが当然」と思っている人は多いはずです。しかしアルボリオ米でリゾットを作るとき、米を洗うのは厳禁です。
理由はシンプルで、米の表面についているデンプンを洗い流してしまうからです。洗うと水分が米に吸収されてしまい、後から加えるスープやブイヨンの旨みが米に入りにくくなります。さらに表面のデンプンが失われると「とろみ」が生まれず、水っぽいスープご飯のような仕上がりになってしまいます。
プロのシェフが実践している手順はこうです。鍋にオリーブオイル(またはバター)を熱し、みじん切りにした玉ねぎを炒めて香りを出したあと、洗っていないアルボリオ米をそのまま投入して1〜2分炒めます。この「炒める」工程により、米粒の表面に薄い油膜ができます。この油膜が煮崩れを防ぎ、粒が均一にスープを吸い込むための「保護膜」として機能します。
続いて白ワインを加えてアルコールを飛ばし、温めたブイヨン(野菜・チキン・魚介など)を玉じゃくし1杯ずつ、合計3〜4回に分けて加えます。毎回スープが吸収されてから次の1杯を加えることが大切です。約18分間この工程を繰り返すと、粒感が残りながらもソースがとろっとした、本格的なリゾットが完成します。
つまり「洗わない・炒める・少しずつ加える」この3ステップが基本です。
参考:リゾットを洗わずに炒める理由と正しい手順を解説した専門記事
【シェフ直伝】本格リゾットのレシピ。生米をアルデンテに仕上げるコツ|FOODIE
サイゼリアのリゾットに感動して「家でも作ってみたい」と思ったとき、最初につまずくのが「アルボリオ米はどこで買えるのか」という点です。
結論から言えば、日本でも複数のルートで購入できます。
最も手軽なのが輸入食材店の「カルディコーヒーファーム」です。全国の店舗でアルボリオ米やカルナローリ米が販売されており、500g〜1kgで1,000円前後で購入できます。在庫は店舗によって異なるため、事前にオンラインショップで確認してから足を運ぶとスムーズです。
業務スーパーにはリゾット用として表記された海外産の米が売られていることがあります。ただしパッケージに「Arborio」や「Carnaroli」と記載されているか確認しましょう。表記のない海外米では、仕上がりが想定と異なる場合があります。
通販(楽天・Amazonなど)では品揃えが最も豊富です。イタリアの老舗ブランド「モンテベッロ」や「アクエレッロ」などの本場品も購入可能で、1kg1,000〜1,600円前後が相場です。初めて買う方にはAmazonの小袋タイプが試しやすくておすすめです。
また近年は日本国内でもカルナローリ米を栽培する動きが広がっています。石川県などで生産された国産カルナローリ米は、輸入品に比べて鮮度が高く価格も安定しており、1kgあたり1,000円前後で手に入ります。アルボリオ米と並ぶリゾット用の選択肢として知っておくと得します。
| 購入場所 | 目安価格(1kg) | 特徴 |
|---|---|---|
| カルディコーヒーファーム | 1,000円前後 | 気軽に購入できる定番 |
| 業務スーパー | 600〜900円 | 品種の確認が必要 |
| 楽天・Amazon(輸入品) | 1,000〜1,600円 | 品揃え豊富・本場ブランドあり |
| 国産カルナローリ(通販) | 1,000円前後 | 鮮度が高く初心者にも◎ |
参考:日本でのイタリア米の購入先・価格帯・保存方法をまとめた解説ページ
サイゼリアのメニューにはリゾット以外にも、アルボリオ米の特性を活かしたアレンジが楽しめる余地が隠れています。知っている人だけが得するポイントです。
サイゼリアのリゾットは単体で食べるだけでなく、「ペコリーノ・ロマーノ(テーブルにある粉チーズ)」を追加トッピングし、オリーブオイルをひと回しかけてから食べると、まるで別メニューのような深みとコクが生まれます。通に知られたオーダー方法で、原価を考えると1,000円クラスの満足感を数百円で得られると評判です。
では家庭でアルボリオ米を活用する場合、リゾット以外にどんな使い道があるでしょうか。大きく3つあります。
1つ目は「アランチーニ(ライスコロッケ)」です。前日の余りリゾットをラップで丸め、パン粉をつけて揚げるだけで、シチリア発祥の揚げ物が完成します。外カリッ・中ふわとろのあの食感は、アルボリオ米特有の粘りがあってこそ実現します。
2つ目は「インサラータ・ディ・リーゾ(米サラダ)」です。アルデンテに茹でた米を冷水で締め、オリーブオイルをまぶしてから野菜やツナを和えます。夏場にぴったりで、パスタサラダの代わりに出すと見栄えが良く、食感も新鮮です。
3つ目は「スープ仕立ての煮込み」です。ミネストローネや野菜スープにアルボリオ米を少量加えると、スープ自体がとろみを持ち、お腹にも優しい一品になります。日本のおじやとは異なる「粒感の残る洋風雑炊」と表現すると伝わりやすいです。
リゾット以外にも使い道は豊富です。1袋500gあれば2〜3回分の料理に使いまわせます。コスパも十分です。
参考:サイゼリアのリゾットをより深く楽しむための本場イタリア米文化の解説