サイゼリヤのワインを「安くてそれなり」と思って飲んでいると、実は5,000円超の銘柄と同じ品種のポテンシャルを見逃しています。
「ブラウ」とはドイツ語で「青(藍色)」を意味します。その名のとおり、果皮は青みがかった深い黒紫色で、グラスに注いだときのワインの色調にも青みが混じった黒々とした色合いが現れます。この色の濃さは、アントシアニンが豊富に含まれている証拠でもあります。
香りの面では、ブラックベリー・チェリー・カシス・スミレといった果実系の香りが主体となりつつ、リコリス(甘草)・黒胡椒・クローブなどのスパイス香が複雑に重なります。これは中央ヨーロッパ特有の冷涼な昼夜の寒暖差が生む清涼感と、成熟時の濃縮感が同時に存在するためです。
「フルーティーなだけ」ではない。これが重要です。
若いヴィンテージでは野イチゴや青ハーブのようなワイルドさが顔を出しますが、熟成が進むにつれ、プラム・ダークチェリー・なめし革のような落ち着いた複雑味に変化します。ひとつの品種でここまで表情が変わるのは、実は赤ワイン品種の中でも珍しい特徴です。
サイゼリヤで飲める赤ワインの中にも「スパイス感のある深みのある赤」を感じたことがある方は多いかもしれません。そのニュアンスを知ることで、グラス1杯の楽しみ方がグッと広がります。
オーストリア伝統の赤ワイン、ブラウフレンキッシュ|リーデル公式ブログ(香りと色調の詳しい解説)
ブラウフレンキッシュを語るうえで外せないのが、「高い酸味」と「しっかりしたタンニン」の組み合わせです。この2つの要素が、この品種をボルドー系赤ワインとも、ピノ・ノワールとも違う独自の立ち位置に押し上げています。
酸度の高さはデータにも表れており、ブラウフレンキッシュは一般的な赤ワイン品種と比べて明らかに酸が強い部類に入ります。しかしこの酸は硬くて刺さるタイプではなく、柑橘系のすっきりした波状の酸味として感じられます。
タンニンが条件です。
若いうちのタンニンはやや無骨でザラつきを感じることがありますが、オーク樽熟成や瓶内熟成を経ると、ヴェルヴェット(ビロード)のように滑らかに変化します。オーストリアワインの公式説明でも「若いうちはしばしば不細工だが、十分熟成させるとヴェルヴェットのようにこなれる」と表現されているほどです。
この構造の強さが、ブラウフレンキッシュを「長熟ワイン向き」たらしめています。高品質なものでは10年以上の熟成に耐える銘柄も存在します。サイゼリヤで飲むようなスタイルなら早飲みタイプが中心ですが、知識として「このブドウは育てると化ける」と知っておくと、ワイン選びの楽しみが一段階上がります。
オーストリアのトップ生産者「モリッツ(MORIC)」が造るブラウフレンキッシュは、ワイン評論家から「東欧のピノ・ノワール」と称されるほどの完成度を誇ります。2001年設立と比較的新しいワイナリーながら、世界的評価を得るまでに20年足らずという急速な台頭も話題になっています。
ブラウフレンキッシュ(Blaufränkisch)品種解説|オーストリアワイン公式(タンニン・熟成の詳細情報)
ブラウフレンキッシュは、国をまたぐと全く別の名前で呼ばれる「シノニム(別名)」が非常に多い品種としても知られています。ラベルに「ブラウフレンキッシュ」と書いていなくても、実は同じブドウを使っていた——そんなケースが起こりえます。
国ごとの呼び名は以下のとおりです。
| 国・地域 | 呼び名 |
|---|---|
| 🇦🇹 オーストリア | ブラウフレンキッシュ(Blaufränkisch) |
| 🇩🇪 ドイツ | レンベルガー(Lemberger) |
| 🇭🇺 ハンガリー | ケークフランコシュ(Kékfrankos) |
| 🇸🇮 スロベニア | モドラ・フランキニャ(Modra Frankinja) |
| 🇨🇿 チェコ | フランコフカ(Frankovka) |
| 🇮🇹 イタリア(フリウリ) | フランコニア(Franconia) |
| 🇭🇷 クロアチア | ボルゴニャ(Borgogna) |
つまり7つ以上の別名を持つ品種ということです。
主要産地はオーストリアのブルゲンラント州です。中でも「ミッテルブルゲンラント」は「ブラウフレンキッシュ・ラント(Blaufränkischland)」と呼ばれるほどの産地で、石灰粘土質の土壌が品種の個性を見事に引き出すといわれています。面積にして約2,550ヘクタール(東京・港区全体の面積の約1.3倍)がオーストリア国内で栽培されており、赤品種ではツヴァイゲルトに次ぐ栽培量を誇っています。
これは使えそうです。
ハンガリー、ドイツ、さらには米国ワシントン州やオーストラリアのアデレードヒルズでも造られており、テロワールの違いによって表情が大きく変わる品種でもあります。同じブドウでも産地が異なれば香りも味わいも変化する——これがワイン好きを深みにはまらせる要因のひとつです。
ブラウフレンキッシュの詳細解説|ワインリンク(シノニムと産地の詳細データ)
ブラウフレンキッシュの高い酸とタンニンは、料理との相性においてひとつの大きなメリットを生み出します。それは「脂っこい料理を受け止め、後味をきれいにリセットしてくれる」という性質です。ステーキや骨付き肉のグリル料理はもちろん、ジビエ料理、ハーブを使ったソース料理との相性は抜群です。
サイゼリヤで考えてみましょう。
たとえばサイゼリヤの定番「若鶏のグリル」や「辛味チキン」「ランプステーキ」などは、ブラウフレンキッシュのスパイシーな果実味と高い酸が実によくマッチします。パスタ系では、アラビアータやボロネーゼのように味の輪郭がはっきりした料理のほうが、このワインの骨格としっかり向き合えます。
意外ですね。
さらに注目すべきなのが、醤油ベースの和食との相性が良い点です。オーストリアワインの専門家・寺下充彦氏は「ブラウフレンキッシュの非常に高い酸には、すき焼きの鍋底で少し焦げかかった醤油を思わせるニュアンスがある」と評しています。この「醤油に近い酸」の特性が、和食との橋渡しになるわけです。照り焼き・肉じゃが・牛丼のような甘辛い醤油料理との組み合わせは、フランスやイタリアのワインよりもむしろ相性がよいとされています。
「赤ワインには洋食」という思い込みがあるかもしれません。しかしブラウフレンキッシュに関しては、その常識は一度外してみる価値があります。サイゼリヤで楽しむとき、頭の片隅に「このワインは醤油料理にも使える」と置いておくだけで、飲み方の選択肢がぐっと広がります。
オーストリアワイン&和食のペアリングレポート|Austrian Wine公式PDF(ブラウフレンキッシュと醤油料理の相性の詳細)
ブラウフレンキッシュは、タンニンが豊富で構造がしっかりした品種です。そのため、開栓直後に飲むと「なんか渋い」「香りが閉じている」と感じることがあります。これはワインが「閉じている」状態で、品種本来の実力が発揮されていない段階です。
どうすれば良いでしょうか?
最も手軽な対策は「デキャンタージュ」です。ボトルのワインをデキャンタ(またはカラフェ)に移し替えて空気に触れさせることで、タンニンが和らぎ、香りが開いていきます。若いヴィンテージのブラウフレンキッシュなら、30〜60分程度のデキャンタージュでも大きく表情が変わります。
デキャンタが手元にない場合、「抜栓後1〜2時間前に開けておく」だけでも効果があります。これが基本です。グラスに注いだ後にスワリング(グラスを円を描くように回す動作)を数回繰り返すのも、簡易的なエアレーションとして有効です。
サイゼリヤでボトルワインを注文するときにも、「少し早めに開けてもらう」または「グラスで少し置いておく」だけで、ブラウフレンキッシュの本来の果実味とスパイス香が開きやすくなります。
🍷 デキャンタージュのタイミング目安
また、ブラウフレンキッシュは「近年の温暖化」によって以前よりも格段に飲みやすくなっているという事実も知っておくと便利です。温暖化により夏の高温期が伸び、酸度が抑えられ、タンニンに丸みが出やすくなっています。10〜15年前のブラウフレンキッシュよりも現代のものは「開きやすい」傾向にあるため、若いヴィンテージでも十分に楽しめるようになっています。
つまり今のブラウフレンキッシュは飲み頃が広がっています。
長期熟成に向けて購入しておくのもひとつの選択です。オーストリアのトップ生産者のワインでも、まだ価格は比較的リーズナブルなものが多く、今のうちに数本購入してセラーで寝かせておくという楽しみ方も、ワイン好きには十分アリな選択肢です。
ブラウフレンキッシュ – オーストリアのアイコン|nobuwine-sake.com(熟成ポテンシャルとデキャンタの実体験レビュー)