サイゼリヤでワインを頼むとき、ランブルスコの微発泡に"なんか飲みやすいな"と感じた経験はないでしょうか。実はその感覚こそが、ペティアン ワインの世界への入口になります。
ペティアン(Pétillant)はフランス語で「わずかに泡立つ」「パチパチと弾ける」という意味を持つ言葉で、その名の通り弱発泡性のワインを指します。スパークリングワインの中でもガス圧が最も低いカテゴリーに属し、ガス圧は1〜2.5気圧程度と定められています。ちなみに一般的なスパークリングワインはガス圧3気圧以上で、シャンパンに至っては5〜6気圧にもなります。ペティアンの泡はその半分以下、つまり口の中でシュワッと優しく弾けて消える、そんなイメージが正確です。
サイゼリヤ好きの方には実はなじみ深いカテゴリーでもあります。サイゼリヤのボトルワインラインナップにある「ランブルスコセッコ」は、まさに赤の微発泡ワインです。イタリア・エミリア=ロマーニャ州産のランブルスコ種を使った辛口の微発泡で、穏やかな泡が口の中で弾けるあの感覚はペティアン独特の飲み心地そのもの。つまりサイゼリヤで"微発泡の赤ワイン"を飲んだことがある人は、すでにペティアン系ワインを体験しているわけです。これは意外ですね。
ペティアンという言葉はフランス語由来ですが、近年では「ペット・ナット(Pet Nat)」という略称も広く使われています。こちらはフランス語の「Pétillant Naturel(ペティアン・ナチュレル)」の略で、より自然派(ナチュラルワイン)の文脈で語られることが多い表現です。両者は厳密には異なる概念ですが、日常会話レベルでは同義で使われているケースがほとんどです。
【ソムリエ監修】フランスの弱発泡性ワイン「ペティアン」を解説|幸せのワイン(ペティアンの特徴・ガス圧・おすすめ銘柄をソムリエが詳解)
ペティアンの多くは「メトード・アンセストラル(Méthode Ancestrale)」と呼ばれる製法で造られています。「アンセストラル」とはフランス語で「古代の」という意味で、何世紀も前から存在する最もシンプルなワイン醸造法です。
通常のスパークリングワインの場合、まずベースとなるワインを一度完全に発酵させ(一次発酵)、その後に糖と酵母を追加して瓶内で二次発酵を起こして炭酸ガスを閉じ込めます。これがシャンパンやプロセッコの基本的な製法です。
ところがアンセストラル方式では、二次発酵をおこないません。一次発酵が完了する前、つまり糖分がまだ残っている発酵の途中で瓶に詰め、王冠で密閉します。そして瓶の中で残りの発酵が続き、酵母が糖をアルコールに変える際に生まれる炭酸ガスがそのまま液体に溶け込んで微発泡が生まれます。これがペティアンの正体です。
発酵がひとつしかないため、製造工程はシンプル。つまり原点回帰の製法とも言えます。しかし見かけの単純さとは裏腹に、制御が難しい部分もあります。瓶詰めのタイミングでの糖度管理が甘いと、ガス圧や残糖度が銘柄ごと、さらには同じ銘柄でもボトルごとに微妙にブレることがあります。これがペティアンの"個性"であり"魅力"でもあります。
また、瓶詰め後に濾過ができないため、酵母の澱(おり)や濁りが液体の中に残ることが多いです。グラスに注いだときのうっすらとした濁り、それが自然の証。濁り日本酒や濁りビールと同じように、ペティアンの澱は飲んでも全く問題ありません。この点も普通のクリアなスパークリングワインとは異なる個性です。
ナチュラルワインで注目の「ペット・ナット(Pet Nat)」とは?|MOTTOX(アンセストラル方式の製法と澱についての詳細解説)
ペティアンを購入したけどいざ開けたら泡が盛大に吹き出した——そういった経験をした人もいるかもしれません。実はこれ、ペティアン特有のリスクで、正しい扱い方を知っていれば防げます。
最大の注意点は「温度管理」です。ペティアンの瓶内にはわずかに糖分が残っている場合があり、室温が上がると再発酵が始まることがあります。再発酵が進むとガス圧が上昇し、開栓時に泡が勢いよく噴き出します。最悪の場合、王冠が自然に弾け飛ぶことも。これが「再発酵」です。防ぐためには15℃以下での保管が基本です。冷蔵庫での保管が理想的で、飲む直前はさらによく冷やすことが大切です。
実は0℃と20℃では炭酸の溶解量が約2倍も変わります。つまりよく冷やすことでガス圧が安定し、開栓がぐっと安全になります。開ける前に氷水で30分ほど冷やすと安心です。
開栓時の手順も大切です。ペティアンは多くの場合、コルクではなく王冠(クラウンキャップ)で密閉されています。開栓時は瓶を傾けず、必ず立てた状態で受け皿の上で開けましょう。王冠を一気にこじ開けず、ゆっくりと空気を少しずつ逃がすようにするのがコツです。
保管と開栓に注意すれば問題ありません。この2点だけ覚えておけばOKです。
ペットナット・発泡ワインの開栓方法|なちゅまる(具体的な手順と噴き出し防止のポイントを詳解)
サイゼリヤでペティアン系のワインを選ぶなら、料理との組み合わせを少し意識するだけで満足度がぐっと上がります。ここが知ると得する部分です。
まずサイゼリヤのワインラインナップの中で、ペティアン(微発泡)に近いのはランブルスコセッコとランブルスコ ロゼです。ランブルスコセッコは辛口の赤微発泡で、果実味がありながらも穏やかなタンニンが特徴。ランブルスコ ロゼは甘口よりのロゼ微発泡で、チェリーやイチゴのような華やかな香りが楽しめます。どちらもガス圧が控えめで、食事のじゃまをしない優しい泡が持ち味です。
ランブルスコセッコに合わせたいのは「ミラノ風ドリア」「辛味チキン」「生ハム」です。イタリアの同じ地域(エミリア=ロマーニャ)の料理文化に根ざしたペアリングで、生ハムとの相性は特に抜群と言われています。ソムリエからも「テロワール合わせとして非常に良い組み合わせ」と評価されるほどです。
一方、ランブルスコ ロゼのほのかな甘みは「プティフォンデュ」や「アランチーニ」のようなチーズ系のメニューと好相性。甘みが脂分をやわらかく包み込み、口の中がさっぱりします。
そして、ペティアン(微発泡)の本来の特性として「油っぽい料理をさっぱりさせる効果」があります。揚げ物やバターを使った料理に合わせると、炭酸の弱い泡が油脂を口中から洗い流してくれます。エスカルゴのオーブン焼きやフライドポテトに微発泡ワインを合わせるのも、実は食通の定番です。
| ワイン名 | タイプ | おすすめサイゼメニュー |
|---|---|---|
| ランブルスコセッコ | 赤・微発泡・辛口 | 生ハム、ミラノ風ドリア、辛味チキン |
| ランブルスコ ロゼ | ロゼ・微発泡・やや甘口 | プティフォンデュ、アランチーニ、エスカルゴ |
| (参考)ペットナット系全般 | 白・微発泡・辛口 | 揚げ物、魚介のカルパッチョ、白身魚 |
ペティアンの世界はサイゼリヤのランブルスコだけではありません。むしろサイゼリヤをきっかけにして「もっとペティアンを探してみたい」と思い始めたなら、選び方を知っておくとスムーズです。
産地で選ぶ場合、ペティアンの発祥地はフランス・ロワール地方です。ロワール地方はフランス最長の川・ロワール川沿いに広がる産地で、冷涼な気候のため酸がきいたミネラル感のある爽快な味わいが特徴です。ヴーヴレ・ペティアンやモンルイ・シュール・ロワール・ペティアンのように原産地呼称(AOC)を持つペティアンも存在します。フランス以外では、オーストリア、オーストラリア、南アフリカ、アメリカ、そして日本でも造られています。
品種で選ぶ場合、ロワールを代表する白ぶどう「シュナン・ブラン」がペティアン用としてよく使われます。リンゴやカリンのような果実味とミネラル感が特徴です。同じくロワールの「ソーヴィニヨン・ブラン」は爽やかな柑橘系の酸と青草のような香りが際立ちます。ロゼのペティアンには「カベルネ・フラン」が多く使われ、ラズベリーやイチゴのようなチャーミングな果実味を持ちます。
価格で選ぶ場合、ペティアンは1,000円台から購入できる手軽なワインです。1,000〜2,000円台はすっきりした日常使いの味わい、3,000円以上になるとコクや複雑さが増し、プレゼントにも向きます。日常のサイゼリヤ感覚で気軽に楽しめるエントリーとして、1,500〜2,000円帯がおすすめです。なお、日本のペティアンも近年急速にクオリティが上がっており、山梨マルスワイナリーの「ペティアン ド マルス 甲州」は、甲州ぶどうを使ったシャンパン製法の本格派として高い評価を得ています。和食との相性も抜群で、サイゼリヤ好きから一歩踏み出した次のステップとしても最適な一本です。