実はプロセッコを「スプマンテじゃない別のワイン」と思って注文すると、1,000円以上の選択ミスにつながることがあります。
「スプマンテ」と「プロセッコ」はよく混同されますが、両者の関係は「果物」と「リンゴ」のようなものです。スプマンテはイタリア語で「発泡する」を意味し、ガス圧が3気圧以上のイタリア産スパークリングワイン全般を指す総称です。つまり、プロセッコもフランチャコルタもランブルスコも、強めの発泡を持つイタリアンスパークリングはすべてスプマンテの仲間ということになります。
プロセッコはそのスプマンテの中でも、イタリア北東部のヴェネト州(ヴェネツィアを擁する州)を中心とした特定の地域で、グレーラ種を85%以上使用して、EU原産地名称保護制度(DOC・DOCG)の基準に沿って造られたものだけが名乗れる、より厳密なカテゴリです。これが基本です。
ちなみにイタリアには、スプマンテより気圧の低い「フリッツァンテ(frizzante)」という区分もあります。ガス圧1〜2.5気圧の微発泡ワインがこれに当たり、サイゼリヤで人気の「ランブルスコセッコ」などがこのフリッツァンテ寄りのスタイルです。スプマンテとフリッツァンテ、気圧の数字だけ覚えておけばOKです。
| カテゴリ | ガス圧 | 代表例 |
|---|---|---|
| スプマンテ | 3気圧以上 | プロセッコ、フランチャコルタ、アスティ |
| フリッツァンテ | 1〜2.5気圧 | ランブルスコ(一部)、プロセッコ フリッツァンテ |
こうして整理すると、ラベルに「スプマンテ」と書いてあってもプロセッコとは限らない、という事実がわかります。スプマンテはあくまで「イタリア産スパークリング全体」のくくりであって、ラベルの表記を確認するのが大切です。サイゼリヤのメニューで「スプマンテ系」を探したいときは、まず「イタリア産かどうか」と「発泡度の強さ」を見るのが基本です。
参考:イタリアワインの総称「スプマンテ」とプロセッコの位置づけについて、エノテカが詳しく解説しています。
プロセッコが厳密に定義される最大の理由は、EUのワイン法による原産地名称保護です。2009年以前は、使用ブドウの品種名そのものが「プロセッコ」と呼ばれていましたが、世界での人気が高まるにつれ、イタリア以外の産地からも「プロセッコ種を使ったワイン」が出回り始めました。これを受けてイタリアとEUは、ブドウの品種名を「グレーラ(Glera)」に改称し、「プロセッコ」という名称はヴェネト州・フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の特定地域で造られたワインのみに保護されることになったのです。
意外ですね。プロセッコというのは、実は元々ブドウ品種の名前だったのです。
プロセッコの格付けには大きく2種類あります。上位の「DOCG(統制保証原産地呼称)」と、より広域の「DOC(統制原産地呼称)」です。DOCGのプロセッコは主に「コネリアーノ・ヴァルドッビアデーネ・プロセッコ・スペリオーレDOCG」として流通しており、この産地は2019年7月にユネスコ世界遺産にも登録されています。一方DOCプロセッコはヴェネト州とフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州にまたがる広い地域を対象とします。
一方でスプマンテはプロセッコのような産地・品種の縛りは一切ありません。イタリア全国どこで造られても、ガス圧3気圧以上の発泡性ワインであればすべてスプマンテを名乗れます。つまり産地・品種・製法の縛りがない分、価格も品質も千差万別です。
サイゼリヤ好きにとって身近な話でいうと、サイゼリヤで全店舗販売されているスパークリング「ドンラファエロ(税込1,100円/750ml)」は、プロセッコスタイルを狙って造られた辛口白スパークリングです。ソムリエの田邉公一氏も「プロセッコ的なワインを狙ったんじゃないかな」と評しており、青リンゴっぽい香りとほどよい酸味がプロセッコの特徴と重なります。これは使えそうです。
参考:サイゼリヤのドンラファエロをソムリエが解説した記事です。
サイゼリヤの定番&スペシャルワインをソムリエが解説|SPUR
プロセッコが手頃な価格(市販で1,000〜2,000円台が多い)でありながら美味しく飲める最大の理由は、「シャルマ方式(タンク内二次発酵)」という製法にあります。第一発酵を終えたスティルワインを大型のステンレス密閉タンクに移し、そこで二次発酵させて炭酸ガスを溶け込ませる方法です。
タンクで一度にまとめて発酵させるため、1本あたりの製造コストが低く抑えられます。これが原則です。
一方、フランチャコルタやシャンパンが採用する「瓶内二次発酵(トラディショナル方式)」は、ボトルごとに二次発酵させ、長期間(フランチャコルタは最低18ヶ月)熟成させます。プロセッコは早いもので翌年には出荷できますが、フランチャコルタは長い熟成を経て市場に出るため、1ヘクタールあたりの生産量も少なく、価格が跳ね上がります。
味わいにも明確な違いが出ます。シャルマ方式のプロセッコは、ブドウ由来のフレッシュなアロマ(青りんご・白桃・柑橘・白い花)がクリアに感じられます。酵母由来のパンやナッツの香りが抑えられているため、食前酒としてだけでなく、サイゼリヤのような多彩なメニューのどれにも合わせやすい万能さがあります。瓶内二次発酵のフランチャコルタはより複雑で奥行きがあり、コース料理や特別な席に向いています。
| 項目 | プロセッコ(シャルマ方式) | フランチャコルタ(瓶内二次発酵) |
|---|---|---|
| 製法 | 大型タンクで二次発酵 | 瓶内で二次発酵・長期熟成 |
| 最低熟成期間 | 短期間(翌年出荷も可) | 最低18ヶ月(ノンヴィンテージ) |
| 香りの特徴 | フルーティー・フレッシュ・白い花 | 複雑・パン・ナッツ・クリーミー |
| 価格帯 | 1,000〜2,500円前後が主流 | 3,000円〜1万円以上 |
| シーン | カジュアルな食事・食前酒 | 特別な席・コース料理 |
サイゼリヤで泡を飲むなら、コスパ最重視ならドンラファエロ(1,100円)、ちょっと本格的に楽しみたいならボトルワインを追加で。プロセッコの知識があると、メニューの「白・発泡・辛口」という表記の意味がよりリアルに伝わってきます。これは使えそうです。
参考:プロセッコのシャルマ方式の特徴についてわかりやすく解説しています。
プロセッコとスプマンテの違いは?オススメのプロセッコ6選|美味しいワイン
プロセッコが世界で年間6億本飲まれているという事実を知っている人は、案外少ないです。シャンパンより1.6倍、カヴァより2倍も多く消費されているというのは、意外ですね。この数字はIWSR(国際蒸留酒・スパークリングワイン調査機関)のデータに基づくもので、プロセッコは現在「世界で最も多く飲まれるスパークリングワイン」の座を保っています。
なぜここまで人気なのでしょうか?
理由は「コスパ」と「飲みやすさ」に尽きます。前述のシャルマ方式の低コスト製法により、多くのプロセッコは市場で1,500〜2,500円前後で買えます。これはシャンパンの平均価格(5,000〜1万円以上)と比べると圧倒的なお得感です。味わいもフルーティーで甘味がほんのり感じられ(残糖度12g/l以上が多い)、ワイン初心者でも飲みやすいです。
この「低価格×高品質×誰にでも飲みやすい」という構造は、サイゼリヤのワイン戦略と驚くほど重なります。サイゼリヤは現地ワイナリーと直接契約し、市場の流通を経由しない仕入れ方式でコストを削減しています。ドンラファエロ750mlが税込1,100円で飲めるのはそのためです。ちなみに同じボトルをコンビニや酒屋で買えば、同等品質のイタリアンスパークリングは2,000〜3,000円以上するのが普通です。
サイゼリヤでプロセッコスタイルのスパークリングをボトルで頼んで、みんなで分けると1杯あたり約180円前後という計算になります。これがプロセッコの魅力の本質です。つまりコスパが高い選択肢です。
参考:プロセッコが世界No.1消費量を誇る理由とデータについて。
プロセッコとは 世界一多く飲まれるスパークリングワイン|cocos
スプマンテはプロセッコだけではありません。サイゼリヤのメニューや一般的なワインショップで目にするスプマンテには、味わいも価格帯も全く異なる個性豊かなワインが揃っています。ここで整理しておきましょう。
まず、アスティ(Asti DOCG)はピエモンテ州でモスカート・ビアンコ種から造られる甘口スプマンテです。アルコール度数が約5〜7%と低く、マスカット特有の華やかな甘い香りが特徴的で、ワイン初心者やデザートに合わせたい人に向いています。サイゼリヤのデザートメニュー(ティラミスやパンナコッタ)と組み合わせると相性が抜群です。
次に、フランチャコルタ(Franciacorta DOCG)はロンバルディア州産の最高格付けスプマンテで、「イタリアのシャンパン」とも呼ばれます。瓶内二次発酵で最低18ヶ月以上熟成(シャンパンの15ヶ月以上より厳しい)。複雑な香りとクリーミーな泡質が特徴で、価格は3,000円〜1万円以上が中心です。フランチャコルタが条件です。
そして忘れてはならないのがランブルスコ(Lambrusco)です。エミリア・ロマーニャ州産の赤系スプマンテで、サイゼリヤメニューにも「ランブルスコセッコ(税込1,100円)」として登場しています。微発泡(フリッツァンテ寄り)でシュワっと軽やか、辛口で果実味があり、チーズや生ハムとの相性が良いです。
サイゼリヤでスプマンテ系を選ぶ際のシンプルな判断基準は「乾杯・食前ならドンラファエロ(プロセッコスタイル)」「食中に赤系の泡を楽しみたいならランブルスコセッコ」という2択です。どちらも税込1,100円というのがサイゼリヤの凄さで、プロセッコの知識があるとこの選択がより自信を持ってできるようになります。厳しいところですね、選択肢が豊富すぎて逆に迷いますが、この整理を持っていれば迷わずに済みます。
参考:スプマンテの各種類(フランチャコルタ、ランブルスコ、アスティなど)について詳しく解説しています。