サイゼリヤのグラスワインを頼むとき、実は「注ぐ前にグラスを回す」のはやってはいけない行為で、香りが飛んで損をします。
漫画『ソムリエール』は、原作・城アラキ、作画・松井勝法、監修・堀賢一による作品で、集英社の『ビジネスジャンプ』にて2006年から2011年まで連載されました。その後も同社のウェブサイトにて2012年まで連載が続き、全129話・全21巻という長編作品です。
タイトルの「ソムリエール」はフランス語でソムリエの女性形を指します。パティシエに対するパティシエールと同じ関係性で、女性のソムリエを表す言葉です。これが意外と知られていないポイントです。
主人公の樹カナは1982年生まれ。幼いころに交通事故で両親を亡くし、スイスの孤児院でぶどうの栽培をしながらワインへの愛情を育てた女性です。のちにフランスの大学の醸造科を卒業し、東京のフレンチレストラン「エスポワール」にソムリエール見習いとして勤め始めます。テイスティング能力は超一流で、銘柄やヴィンテージをほぼ正確に当てる力を持ちますが、「人(客)を見ていない」という欠点を持ち、支配人の片瀬から指摘を受けながら成長していく物語です。
技術的な知識は完璧。でも人間を見るのが苦手というキャラクターです。
この設定が物語をとても立体的にしています。サイゼリヤのワインに親しんでいる人にとって、「高い知識があっても相手に合ったワインを選ぶことの方が大事」というカナの成長は、身近な体験として刺さるはずです。ワインの値段や格式よりも、「その場の人が何を求めているか」を重視するソムリエの姿勢は、毎日の食卓にも通じます。
作品の巻末には、監修者の堀賢一氏によるワインコラム「ワインの自由。」が掲載されており、漫画でありながら本格的なワイン入門書の側面も持ちます。ただし、電子書籍版ではこのコラムが未収録のため、紙版で読むことで情報量が異なる点には注意が必要です。つまり紙版の方がお得です。
参考リンク(漫画『ソムリエール』の全129話のあらすじ・登場人物情報)。
ソムリエール(漫画)- Wikipedia
漫画『ソムリエール』の最大の魅力のひとつは、全129話にわたって登場するワインの銘柄の多彩さです。フランス・ボルドーやブルゴーニュの定番から、レバノン、ニュージーランド、北海道産まで幅広く登場します。
たとえば第13話「ニッポン人の情熱」では、北海道ワイン株式会社が製造する「鶴沼ミュラー・トゥルガウ」が登場します。1975年にドイツから苗木を輸入し、北海道産ブドウにこだわり続けた情熱の結晶です。これが国産ワインへの扉を開いてくれます。
また、第17話「橋」に登場する「シャトー・ミュザール」は中東レバノン産のワインで、海抜1,000メートルの畑で育てられます。内戦の続くレバノンでは収穫できない年もある、という背景とともに描かれ、「ワインは平和があってこそ生まれる」というメッセージが強烈に刻まれます。世界のワインが持つ歴史の深さを実感できる一話です。
第47・48話「もう一杯のロマネ・コンティ」では、1杯で数万円以上するロマネ・コンティが登場しますが、漫画の物語が示すのは「高いワインが最高とは限らない」という逆説です。これが基本です。
🍷 代表的な登場ワインを一覧でまとめると。
これらのうち日本国内で購入しやすいのは、ヴィラ・マリアのソーヴィニヨン・ブランやエラスリスのカベルネ・ソーヴィニヨンなどで、1,000〜2,000円程度で手に入ります。漫画で知った銘柄を実際に試してみるのが、ソムリエール式ワインの楽しみ方の第一歩です。
参考リンク(漫画ソムリエールに登場する全ワインリストを話数別に掲載)。
漫画『ソムリエール』に登場するワインリスト、時を閉じ込めた果実 - Wine Bible
漫画『ソムリエール』の第18話「ワインの保管」と第39話「ワイン通が知らないワイン常識」には、多くの人が無意識にやってしまうワインのNG行動がまとめられています。これを知っているだけで、サイゼリヤでのワイン体験が変わります。
① グラスを受け取ったらすぐ回さない
ワインが届いたら、まず回さずに香りをそのまま嗅ぐのが正解です。スワリング(グラスを回すこと)はワインを空気に触れさせて香りを開かせる技術ですが、デリケートな香りはスワリングによって飛んでしまうことがあります。最初の一嗅ぎを大切にする習慣を持ちましょう。
② ヴィンテージ=高品質・高価格は誤解
「古いワインほど価値が高い」と思っている人は多いですが、これは正確ではありません。ボルドーの5大シャトーでも、収穫から30年を過ぎるとピークを過ぎることがあります。目安として3,000円以下のワインは保管せず、購入後すぐに飲むのが得策です。熟成で味が変化するのは5,000円以上が基本、という点も覚えておくと判断が楽になります。
③ 「コルクで呼吸する」はただの誤解
「コルクを通してワインが呼吸し熟成される」という話を聞いたことがある人は多いでしょう。実はこれは科学的に証明されておらず、ボトル熟成でワインの味が変わる理由はいまだ解明されていない部分が多い、というのが正確な情報です。意外ですね。
④ 古いワインにデキャンタージュはNG
デキャンタージュはワインの澱を除き、空気に触れさせて香りを開かせる方法ですが、20年以上の熟成ワインに対してはかえって複雑な芳香が飛んでしまうリスクがあります。使うタイミングは「一口飲んで還元臭(腐ったゆで卵のような匂い)がする場合のみ」が原則です。
⑤ ワインポンプは1回だけ使う
飲み残したワインを保存するためのワインポンプ(真空ポンプ)は、シュコシュコと何度もポンピングすると揮発性成分まで吸い上げてしまいます。1本に対して1回だけが鉄則です。
これら5つを知っているかどうかで、ワインの楽しみ方は大きく変わります。知らないと損する情報です。
参考リンク(漫画ソムリエールから学ぶワインの誤解と正しい知識)。
ワインの間違った誤解・知識〜漫画『ソムリエール』より - Wine Bible
サイゼリヤのワインは、イタリアの現地ワイナリーと直接契約・直輸入しているため、流通コストが削減され、グラスワインが税込100円(120ml)という驚きの価格を実現しています。実はサイゼリヤは日本でイタリアワインの消費量が最も多い飲食チェーンのひとつです。
漫画『ソムリエール』の主人公・樹カナが繰り返し強調するのは「高いワインが最高ではない」という哲学です。この哲学はサイゼリヤのワインリストと非常に相性がよく、「その場にいる人の気分・料理・価格」に合ったものを選ぶことがカナ流のソムリエの姿勢といえます。
サイゼリヤの代表的なワインと選び方のポイントをまとめると。
| 銘柄 | 種類 | 価格(ボトル) | おすすめシーン |
|---|---|---|---|
| ランブルスコ・ロゼ | 微発泡・甘口ロゼ | 約1,100円 | 乾杯・デザートと一緒に |
| ベルデッキオ | 白・辛口 | 約1,100円 | シーフード・前菜に最適 |
| キャンティ・ルフィナ・リゼルバ | 赤・辛口 | 約1,100円 | 肉料理・トマト系パスタと |
| マグナムボトル(赤・白) | 赤または白 | 約1,100円(1.5L) | 複数人でのテーブルシェア |
ソムリエール流で特に意識したいのは「料理との相性=マリアージュ」です。ランブルスコ・ロゼのような微発泡・甘口は、揚げ物や少し油っぽい料理と合わせると爽やかさが際立ちます。ベルデッキオはレモンや潮の香りが特徴で、魚介類を使ったメニューと組み合わせると一口ごとに味が変化していく体験ができます。
「ワイン通」になろうとするのではなく、「ワイン好き」として場を楽しむことが最も大切です。これはカナが最終的に学んだ教訓そのものです。
参考リンク(ソムリエがサイゼリヤのワインをテイスティング・解説)。
ソムリエがサイゼリヤの100円ワインを飲んでみた感想 - マカロニ
漫画『ソムリエール』が他のワイン漫画と一線を画すのは、ワインの知識を披露する作品ではなく、「ワインを介して人と人がわかり合う物語」であるという点です。神の雫のような主人公の特殊能力描写や感動演出とは方向性が異なります。
各エピソードはほぼ一話完結で、お客それぞれの人生背景とワインの組み合わせで物語が描かれます。たとえば第17話では、レバノンの内戦の中でワインを通じて日本人とレバノン人の心がつながる話が描かれます。第27話では、ボージョレ・ヌーヴォーを巡る「新酒の感動」と職人の情熱が交わる話が展開されます。
一話完結ベースが基本です。サイゼリヤのような気軽な場でワインを飲みながら読むのにもちょうどいいテンポです。
ここで知っておくと面白いのが、同じ原作者(城アラキ氏)による人気作『バーテンダー』との世界観のつながりです。「ソムリエール」の作中に、「バーテンダー」に登場するホテル・カーディナルの名前が出てくる話があります。城アラキ作品を読み込んでいるファンにとってはニヤリとできる仕掛けです。
また、漫画の各巻末には監修の堀賢一氏によるコラム「ワインの自由。」が収録されており、本編で登場したワインについての解説を読めます。これは紙のコミックス限定の特典です。電子書籍版ではコラムが省略されているため、ワインの知識をしっかり深めたい場合は紙版での購入がおすすめです。これは要注意です。
サイゼリヤでワインを楽しむとき、グラスの向こう側には造った人の情熱や、ブドウが育った土地の歴史が詰まっています。そのことを思い浮かべながら飲むだけで、100円のグラスワインも少し違った味わいになるはずです。
最後に改めて整理すると、ソムリエール漫画から学べるポイントは3つです。
参考リンク(ソムリエール・樹カナのワイン哲学と作品の読みどころを解説)。
ワイン愛だけは一人前のソムリエール・樹カナから学ぶ"ワイン道" - ヒトサラ