サイゼリヤのワインメニューを眺めていると、「ロウレイロ」という名前が目に入ったことがある人も多いはずです。でも、その中身をきちんと知っている人はそれほど多くありません。
ロウレイロは、ポルトガル北西部のヴィーニョ・ヴェルデ(Vinho Verde)産地を代表する白ブドウ品種のひとつです。名前の由来はポルトガル語で「月桂樹(ローレル)」を意味し、名前が示す通り、月桂樹の花を思わせる清々しいハーブ系の香りがこの品種の最大の個性です。
この品種が育つのは、ポルトガル北西部のミーニョ地方。大西洋からの海風が吹き込む冷涼で湿潤な気候と、花崗岩質の土壌がロウレイロの繊細な香りを生み出す環境を整えています。同じ土壌をほかの地域に持ち込んでも、あの華やかさはなかなか再現できないと言われています。つまり、産地の個性がそのままワインに宿っているということです。
もともとはリマ川沿いの地域だけに見られた品種で、その後ヴィーニョ・ヴェルデ全域へと広がっていきました。今では単一品種のボトルも増えていますが、伝統的にはアリントやトラジャドゥーラ、アルヴァリーニョといった地元品種とブレンドされることが多かった経緯があります。ポルトガルワインの土台を支えてきた品種なのですね。
DNA解析によって、ロウレイロ・フィーノ(Loureiro Fino)とロウレイロ・グロッソ(Loureiro Grosso)という系統差があることも近年明らかになっています(出典:INIAV=ポルトガル国立農業研究機関、Universidade do Minho)。栽培場所や収穫タイミングによっても香りの出方が変わる、繊細かつ奥深い品種です。
サイゼリヤのワインと関連づけて語られることもありますが、実はロウレイロ単体のワインは日本国内でもエノテカやワイン専門オンラインショップで取り扱いがあり、2,000〜4,000円の価格帯で見つかることが多いです。専門店に足を運んだり、オンラインストアで検索してみると、意外とアクセスしやすい品種です。
ロウレイロを初めて飲んだ人のほとんどが、まず香りに驚きます。
グラスに注いだ瞬間、白い花やオレンジブロッサム、ライムや青リンゴのような爽やかな香りがふわっと立ち上ります。さらに奥にはほのかなハーブ(ローレル)の清涼感もあり、この組み合わせはほかの白ワインではなかなか出会えないアロマです。香りだけで「飲んでみたい」と思わせる品種です。
味わいのベースは、シャープで鮮烈な酸味。キンと冷やして飲んだときのレモンやグレープフルーツを噛んだような、キレのある酸っぱさです。これが、ロウレイロを食事と合わせたときに「料理が進む」と感じる最大の理由で、口の中をリセットしてくれます。ライト〜ミディアムボディで余韻にはほのかな苦みがあり、後味をすっきりと締めてくれます。
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 香り | 白い花、オレンジブロッサム、ライム、青リンゴ、ハーブ |
| 味わい | 爽やかでシャープな酸味、ライト〜ミディアムボディ |
| 余韻 | ほのかな苦み、すっきりした後味 |
| アルコール度数 | 9〜11.5%(一般的なワインの12〜14%より低め) |
| スタイル | スティル(微発泡タイプも存在) |
アルコール度数が9〜11.5%と低めなのも見逃せないポイントです。一般的なワインが12〜14%程度であることを考えると、ロウレイロは平均より約2〜3%低い水準です。体感としては、食中に1〜2杯飲んでも重たくなりにくく、ワインに不慣れな人でも「素直においしい」と感じやすいです。
サービス温度は6〜10℃が推奨されています。冷やしすぎると香りが閉じてしまうため、冷蔵庫から出して10分ほど置いてからグラスに注ぐと、華やかなアロマが一番よく開きます。グラスはチューリップ型の白ワイン用グラスが適しています。
【Wines of Portugal 公式】ロウレイロ品種の詳細情報(月桂樹の花・オレンジの花・アカシアの香りを解説)
ロウレイロを語るうえで欠かせないのが、「ヴィーニョ・ヴェルデ(Vinho Verde)」というワインの存在です。
ヴィーニョ・ヴェルデはポルトガル北部・ミーニョ地方の産地名であり、ここで造られるワインをまとめてそう呼びます。「緑のワイン」と訳されますが、これは色のことではなく、若々しくフレッシュな味わいを指す表現です。白・赤・ロゼの3種類が造られていますが、圧倒的に多いのは白ワインです。
ヴィーニョ・ヴェルデの白ワインのクラシックなスタイルは、「ロウレイロを主体に、酸の強いアリント、果実味豊かなトラジャドゥーラをブレンドしたもの」と説明されることが多いです。このブレンドによってバランスが取れた爽やかな味わいが生まれます。ロウレイロが骨格を担っているということです。
近年は、ロウレイロ単一品種として瓶詰めされたワインも増加しています。単一品種(モノセパージュ)にすることで、ロウレイロ本来の花のような香りがより前面に出たワインになります。これは意外ですね。
ヴィーニョ・ヴェルデはもともと微発泡タイプが定番でしたが、現在は発泡なしのスティルタイプも多く流通しています。また、近年はシュール・リー(澱と一緒に熟成させる製法)を使って旨みを引き出したスタイルや、軽く樽熟成させた複雑みのあるタイプも登場しており、同じ「ヴィーニョ・ヴェルデ ロウレイロ」でも造り手によって全く異なる表情を見せます。
【サントリー ワインコラム】夏こそ飲みたいヴィーニョ・ヴェルデ|ロウレイロを主体とするクラシックなスタイルを解説
「ロウレイロのワインを実際に飲んでみたい」という人のために、代表的な銘柄をご紹介します。
ロウレイロ単一品種として最も高い評価を受けているのが、「キンタ・ド・アメアル(Quinta do Ameal)」です。リマ川流域という、ロウレイロ発祥の地ともいえる場所に位置するワイナリーで、「高品質なワインがロウレイロから造れることを世界に証明した」とも称されるパイオニアです。手摘み・オーガニック栽培で育てられたブドウを空気圧式プレスで優しく搾り、ステンレスタンクで7ヶ月間澱と共に熟成させてボトリング。アルコール度数は11.5%、定価2,400円(税抜)で、ワイン専門店やオンラインショップで購入できます。ワイン&スピリッツ誌では93ポイント(2019年ヴィンテージ)という高評価を獲得しています。
| 銘柄名 | 産地 | 特徴 | 目安価格 |
|---|---|---|---|
| キンタ・ド・アメアル ヴィーニョ・ヴェルデ ロウレイロ | ポルトガル・リマ | 白い花と柑橘のアロマ、熟成ポテンシャルあり。オーガニック認証取得 | 約2,400円〜 |
| キンタ・ダ・パルミリーニャ ロウレイロ | ポルトガル・ヴィーニョ・ヴェルデ | レモン・ライムのアロマ、鶏むね肉や白身魚と相性◎ | 約1,500円〜 |
| アフェクテュス・ロウレイロ(エノテカ取扱) | ポルトガル | 透明感ある味わい、飲み飽きしない軽やかさが特徴 | 約2,000円〜 |
日本国内での入手についていうと、ロウレイロ単一表記のボトルはやや見つけにくい面があります。エノテカや木下インターナショナル、ポントヴィーニョといったポルトガルワイン専門輸入業者のオンラインショップで検索すると見つかりやすいです。「ヴィーニョ・ヴェルデ」で検索し、品種欄に「ロウレイロ」と記載されているものを選ぶのがコツです。
類似の風味を手軽に体験したい場合は、アルバリーニョやソーヴィニヨン・ブランのワインが代替候補になります。アルバリーニョはやや塩気と凝縮感がプラスされた感じ、ソーヴィニヨン・ブランはハーブと柑橘の鮮烈さが似た方向性です。ロウレイロが気に入ったら、次のステップにこれらを飲み比べてみるのも楽しいです。
ロウレイロの爽やかな酸味とフローラルな香りは、どんな料理にも合わせやすいとはいえ、特に「引き立て合う」組み合わせを知っておくと、食事のクオリティが格段に上がります。
基本的な考え方は、ロウレイロの酸味が「口の中をリセットする役割」を持つことを活かすことです。油脂分やこってりしたソースを使った料理でも、一口ロウレイロを飲むごとにすっきりとした状態に戻れます。相性の良い料理の傾向は以下の通りです。
サイゼリヤのメニューで組み合わせるなら、小エビのサラダ(ドレッシング添え)、ムール貝のガーリックソテー、ほうれん草のソテーあたりが特によく合います。魚介料理にロウレイロ、これが基本です。
一方で、濃いトマトソースや重い赤肉料理と合わせると、ロウレイロの繊細な香りが食材の風味に負けてしまいます。ロウレイロを頼んだ日は、メニューを白身魚・野菜・軽いパスタ中心に組み立てると全体のバランスがまとまります。
ポルトガル現地では、バカリャウ(塩タラ)のグラタンとロウレイロを合わせるのが定番です。塩気とクリームのコクをロウレイロの酸がまとめ上げる組み合わせで、一度体験するとその相性の良さに納得できるはずです。
【メルカード・ポルトガル ワインナビ】ロウレイロとタラの芽など旬野菜を合わせたペアリングの実例紹介
サイゼリヤ好きの目線でワインを楽しむなかで、あまり語られることのない視点をひとつ紹介します。それは「ロウレイロは今、ワイン業界で将来性のある品種として特別な注目を集めている」という事実です。
近年、世界各地の有名ワイン産地で気候変動の影響が顕在化しています。南フランスやイタリアの産地では気温上昇によりブドウの酸味が落ちやすくなり、アルコール度数が上がりすぎるという問題が起きています。そのなかで、もともと冷涼な環境で育つロウレイロは、比較的乾燥に強い性質を持ち、温暖化が進んだ環境でも安定した酸を保ちやすいとされています。
これは、ロウレイロがヴィーニョ・ヴェルデ地方のやせた花崗岩質土壌と大西洋性の冷涼な気候と深く結びついているためで、土壌由来のミネラル感がその耐性を支えているとも言われています。INIAV(ポルトガル国立農業研究機関)の研究でも、このような環境適応性の高さが確認されています。
また、近年の醸造技術の進化も見逃せません。かつてのロウレイロは「若飲みの品種」として扱われることがほとんどでしたが、キンタ・ド・アメアルのようなパイオニアが熟成ポテンシャルを証明したことで、3〜5年の瓶熟成に耐えるクオリティのワインも出てきています。若いうちの花のような香りから、時間を経てハチミツや蝋のような複雑な香りへと変化していく様子は、これまでのロウレイロのイメージを大きく覆します。
加えて、スペインのガリシア地方(国境を接するポルトガルのすぐ北側)でも「ロウレイラ」の名でロウレイロに近い品種が栽培されており、国境を越えた香り文化としての側面も研究者の間で注目されています。コム兄ブログなどのワインメディアでも、ガリシア×ロウレイロの文脈で記事が増えてきています。サイゼリヤのリーズナブルなワインに慣れてから、こういった深い世界に踏み込んでいくのも、ワイン探求の醍醐味です。
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