牛肉をワインで煮込むだけで、お肉が数倍も旨くなるのを知っていますか?
ブラザート(Brasato)という名前の語源を知ると、この料理への理解が一気に深まります。イタリア語で「炭」を意味する「ブラーチェ(brace)」、その古い呼び方である「ブラーザ(brasa)」が語源とされています。かつてのピエモンテの農村では、暖炉の炭の上に厚手の鍋を置き、牛肉をじっくり煮込むのが冬の風物詩でした。
北イタリア・ピエモンテ州は、アルプス山脈と丘陵地帯に囲まれた内陸の地域で、海を持たない地形です。そのため郷土料理は自然と、肉・野菜・バター・チーズなど陸の食材を中心とした構成になっています。ブラザートはまさにその典型で、牛肉の塊を赤ワインと香味野菜に漬け込み、弱火でコトコト煮込んで仕上げる料理です。
つまり「炭火の鍋料理」というのが原点です。
現在でもブラザートはピエモンテを代表する郷土料理として、レストランから家庭の食卓まで広く愛されています。日本の牛の肉じゃがに相当するような、地域のソウルフードと言えるでしょう。サイゼリヤをはじめとするイタリアンレストランで「赤ワイン煮込みの牛肉」が登場したとき、その背景にはこの長い歴史があります。
料理名を聞いただけで文化が見えてくる。それがブラザートの面白さです。
ブラザートの語源について詳しく解説されたイタリア料理専門ブログ(ブラーザ=炭の意味)
「ビーフシチューとどう違うの?」と思う人は少なくないはずです。見た目が似ているため混同されやすいのですが、実は調理哲学がまったく異なります。
ビーフシチューは基本的にカットした牛肉を炒め、デミグラスソースや小麦粉でとろみをつけて煮込むスタイルです。一方ブラザートは、塊肉のまま一晩以上赤ワインにマリネしてから調理します。これが重要な点で、肉を「切らずに煮込む」ことが特徴の一つです。
煮込んだあとも肉は塊のまま取り出し、スライスして皿に盛ります。ソースは煮汁をミキサーにかけて滑らかにしたものを使うのが伝統的なスタイルで、小麦粉でとろみをつけることはあまりしません。肉の旨みと野菜の甘みが溶け出した煮汁そのものをソースにするのが本来の姿です。
これは使えそうです。
また、使うワインの種類もポイントになります。正式名称「ブラザート・アル・バローロ(Brasato al Barolo)」が示す通り、ピエモンテの最高級ワインであるバローロを使うのが伝統的な形です。バローロは「ワインの王」とも呼ばれるほど格式のある銘柄で、ボトル1本が数千円〜1万円を超えることも珍しくありません。1本丸ごとを料理に注ぎ込む贅沢さが、ブラザートをピエモンテの「ごちそう料理」たらしめている理由です。
バローロが基本です。ただし、バローロと同じネッビオーロ種ブドウを使った「ランゲ・ネッビオーロ」など手頃なワインでも、十分に美味しく仕上げることができます。
「なぜ赤ワインで煮込むと、あんなに柔らかくなるのか?」この問いには、ちゃんとした科学的な答えがあります。
赤ワインには3つの働きがあります。①アルコールが肉の保水性を高めてパサつきを防ぐ、②ポリフェノールが肉のたんぱく質と結合して肉汁の流出を抑える、③有機酸がコラーゲンの溶解を促進する——この3つが組み合わさることで、水煮では出せない「ほどける柔らかさ」が生まれます。
日本大学国際関係学部の研究によれば、赤ワインで煮た牛肉は水煮に比べてコラーゲンの可溶化が進み、より軟らかくほぐれやすくなることが示されています。コラーゲンというと美容のイメージが強いですが、肉の繊維を束ねているのもコラーゲンです。これが溶けることで、箸でほぐれるような食感が実現します。
コラーゲンが溶けるのが条件です。
さらに、一晩漬け込む工程には別の意味もあります。酸性のワインに漬けることで肉の保水性が増し、加熱しても肉汁が逃げにくくなるのです。だから「翌日が本番」と言われるほど、作り置きすることで味が深まる料理なのです。
サイゼリヤの「牛すね肉のシチュー」も、牛すね肉を赤ワインに漬け込んでからデミグラスソースで煮込むスタイルを採用していました。あの柔らかさには、こういう科学的な裏付けがあるわけです。
ワインの調理効果についての解説コラム(有機酸・ポリフェノール・アルコールの3つの働き)
ブラザートの基本工程は、難しそうに見えて実はシンプルです。大まかに「漬け込み」→「焼き付け」→「煮込み」の3段階で完成します。
まず、牛肩ロースやすね肉などの塊肉(500g〜700g程度)に塩こしょうをし、ざく切りにした玉ねぎ・にんじん・セロリ・にんにくとともに赤ワイン400〜500mlに漬け込みます。時間は最低でも一晩、理想的には24時間以上です。ローリエやクローブなどのスパイスを加えると、より本格的な香りになります。
焼き付けが旨みの貯金です。
漬け込んだ肉を取り出し、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ります。これをバターを溶かしたフライパンで、全面にしっかり焼き色をつけます。この「メイラード反応」による焦げ目が、煮込んだあとの旨みの複雑さを作ります。急いで焼くと色がつく前に肉汁が流れ出てしまうので、じっくり時間をかけることが大切です。
焼き色がついた肉を厚手の鍋に移し、マリネ液(野菜・ハーブ・ワイン)も一緒に入れます。弱火で1.5〜4時間、途中で何度か肉を返しながら煮込みます。レストランでは6時間以上かけることもあります。できあがった肉を取り出してスライスし、煮汁をミキサーにかけたソースをかけて完成です。
付け合わせは、ソースを受け止めるマッシュポテト・ポレンタ・バゲットが定番です。ポレンタとはとうもろこし粉を練ったもので、北イタリアの家庭では白米感覚で食べられています。日本ではなじみが薄いですが、サイゼリヤがあるようなイタリア料理店では時おり添え物として登場します。
圧力鍋を使えば60分で仕上げることも可能です。手間はかかりますが、煮込んでいる間はほぼ放置できるため、実際の作業時間は意外と短くてすみます。
ブラザートアルバローロの詳細レシピ(材料・手順つき、圧力鍋対応)
サイゼリヤが好きな人なら、ブラザートと直接つながるメニューに出会ったことがあるかもしれません。2021年〜2022年にかけて提供されていた「リゾット&牛すね肉のシチュー」(900円)は、赤ワイン漬け込みのすね肉をデミグラスソースで煮込んだ本格的な一品でした。サフランリゾットを添えた盛り付けはミラノの郷土料理「オッソブーコ」スタイルで、ブラザートとオッソブーコという2つのイタリアン煮込み文化が一皿に凝縮されていました。
このメニューを知ると、サイゼリヤがただ安くてボリュームのある料理を出すだけでなく、イタリア各地の郷土料理文化を根拠として持ちながらメニューを構成しているのがよくわかります。意外ですね。
ブラザートの知識があると、サイゼリヤのメニューを選ぶ視点が変わります。たとえば赤ワインのハウスワインを頼むとき、「ネッビオーロ系のフルボディ」を意識して選ぶと、煮込み料理との相性が格段に上がります。サイゼリヤのフレッシュワインは250mlデカンタが200〜300円前後と非常に安価なため、気軽にペアリングを楽しめます。
本場のブラザートをもっと体験したいなら、ピエモンテ料理を専門にするレストランを探してみるのも一つの選択肢です。東京や大阪には「ブラザート・アル・バローロ」をコースで提供するトラットリアが複数あり、1万円前後のコースに含まれることが多いです。サイゼリヤで本場の煮込み文化に目覚めた人が、次のステップとして本格イタリア料理へ進む流れは自然なことです。
本場の味を知ると選択肢が広がります。
また、自宅でブラザートに挑戦する際、バローロを用意するのが難しい場合は、スーパーで購入できる1,000〜1,500円程度のイタリア産フルボディ赤ワインで代用できます。大切なのはワインの格式よりも、「しっかり漬け込む」「じっくり煮込む」という工程を守ることです。この2点さえ守れば、家庭でも十分に本格的な風味が出せます。
サイゼリヤで赤ワインを楽しむ感覚を入口にして、ブラザートという一つの料理の深さをたどっていくと、北イタリアの食文化がぐっと身近に感じられるはずです。
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