デレスタージュ ワイン がサイゼリヤに合う本当の理由

デレスタージュという醸造技術がワインの味わいをどう変えるか知っていますか?サイゼリヤのワインが「安いのに飲みやすい」と言われる秘密も、この製法と深く関わっているかもしれません。

デレスタージュ ワイン の秘密とサイゼリヤで楽しむ方法

渋いワインを飲んだ後にチーズを食べると、渋みがさらに強くなる場合があります。


📌 この記事の3ポイント要約
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デレスタージュとは?

発酵中に果汁をタンクから一度すべて抜き取り、果皮・種子を数時間空気にさらしてから果汁を戻す醸造技術。柔らかなタンニンと豊かな果実味を生み出す。

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なぜ飲みやすくなるの?

種子を除去できるため、えぐみの原因になる粗いタンニンを取り除ける。空気接触による酸化でタンニンが変質し、なめらかな口あたりになる。

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サイゼリヤのワインとの関係

サイゼリヤのグラスワイン(赤)はモンテプルチアーノ種を使い、柔らかい口あたりが特徴。イタリア直輸入でソムリエも驚くコスパを誇り、デレスタージュ的な製法との相性が理解できると選ぶのが楽しくなる。


デレスタージュとは何か:ワイン醸造の基本をおさらい

赤ワインを造るとき、ブドウは果皮・種子・果肉ごとまとめて発酵タンクに入れられます。発酵が進むと、炭酸ガスが発生して果皮や種子が液面に浮き上がり、「果帽(かぼう)」という固まりを形成します。この果帽をどう扱うかが、ワインの味わいを大きく左右します。


デレスタージュ(フランス語:délestage)は、そのなかでも特に大胆な手法です。発酵途中に果汁をタンクから完全に別容器へ抜き取り、果帽(果皮・種子・果梗)だけをタンクに残した状態で数時間置きます。そして改めて果汁を上から戻し入れる、という工程を踏みます。英語では「Rack and Return(ラック・アンド・リターン)」と呼ばれることもあります。


つまり、「抜いて・待って・戻す」が基本です。


発酵中に果皮や種子が空気に数時間さらされることで、果皮内のフェノール化合物が酸化分解され、色素やタンニンが溶け出しやすくなります。同時に、タンニンそのものの質が変化して、えぐみの少ないなめらかな口あたりへと変わります。過度にプレス(圧搾)をしなくても果皮成分が自然にワインへ浸出するため、繊細なコントロールが可能になるのです。これは使えそうです。


元々はフランスのローヌ地方を中心に使われていた技術ですが、現在ではイタリアをはじめ世界各地に広がりつつあります。知っておきたい醸造用語のひとつです。


参考:デレスタージュの詳細な定義と解説
ワインボキャブラ天国【第106回】「デレスタージュ/澱抜き静置法」英:rack and return – Firadis WINE CLUB


デレスタージュとルモンタージュ・ピジャージュの違い

赤ワイン醸造で行われる「果帽の撹拌」には主に3種類の方法があります。それぞれの特徴を整理しておくと、デレスタージュの独自性がより明確になります。


まずルモンタージュ(ポンピングオーバー)は、タンク下部から発酵液をポンプで吸い出し、上部の果帽に上からかけ戻す方法です。大型タンクでも効率よく作業できるため、ボルドーなど規模の大きいワイナリーで広く採用されています。


次にピジャージュ(パンチングダウン)は、人が足で踏んだり、「櫂(かい)」と呼ばれる棒状の道具で果帽を液中へ押し込む方法です。きめ細やかな酸素量の調整ができるため、ブルゴーニュなど繊細なワイン造りをするエリアに多い手法です。


そしてデレスタージュは、この2つよりも「よりダイレクト」です。果汁を完全に抜き取るため、果帽を空気に広く長くさらすことができます。


| 手法 | 操作の概要 | 特徴 |
|------|-----------|------|
| ルモンタージュ | ポンプで下から抜いて上に戻す | 大規模向け・穏やかな抽出 |
| ピジャージュ | 棒や足で果帽を押し込む | 繊細な調整・小規模向き |
| デレスタージュ | 果汁を全量抜いて静置・戻す | 最も大胆・滑らかなタンニン |


大きな違いは、デレスタージュでは果汁を抜く際に種子を取り除けるという点です。種子には渋みの強い粗いタンニンが含まれており、これを除去することで舌触りの良いなめらかなワインに仕上がります。つまり口当たりが良くなるということです。


参考:3つの撹拌手法の目的と違いについて詳しく解説しています


デレスタージュが生み出すワインの味わいの変化

デレスタージュを施すことで、ワインの味わいにはいくつかの具体的な変化が起きます。この製法の恩恵を理解しておくと、グラスを傾けたときの楽しみ方が変わります。


最も大きな変化はタンニンの質です。果皮や種子が空気にさらされることで酸化が進み、タンニンのポリフェノール鎖が変質・分解されます。渋みそのものが消えるわけではありませんが、ガサついた粗さが取れて、絹のようにスムーズな口あたりへと変わります。ワイン専門家たちはこれを「シルキーなタンニン」と表現することがあります。


次に色素の抽出効率が上がります。果皮が空気にさらされている間に、細胞壁が柔らかくなり、アントシアニン(赤い色素)が溶け出しやすくなります。その結果、深みのあるルビー色や赤みの強い色調のワインができあがります。


さらに、果実味の豊かさも引き出されます。過度な機械的プレスをせずに成分を浸出させるため、フルーツ本来のアロマが損なわれにくいのです。いいことですね。


ただし、一方でデメリットもあります。タンクを2台使用する必要があるため、設備的な余裕がないワイナリーには向きません。また、空気への接触が長すぎると酸化が過剰になるリスクがあります。抽出量がルモンタージュよりも少なくなる傾向もあり、超熟成タイプの濃厚なワインを狙う醸造家には不向きな場面もあります。製法の選択は条件次第が原則です。


参考:デレスタージュの発祥地・南フランスのローヌ地方を含む詳細解説
【教えて】デレスタージュとは? – Terroirum ワイン用語辞典


デレスタージュとサイゼリヤの赤ワインの共通点

サイゼリヤのワインを飲んだことがある人なら、「安いのに飲みやすい」「渋みが少なくて口に合う」という印象を持った方も多いはずです。その理由は、使っているブドウ品種とイタリアの醸造技術の組み合わせにあります。


サイゼリヤのハウスワイン(赤)はモンテプルチアーノ・ダブルッツォというブドウ品種を使用しています。イタリアのアブルッツォ州が原産地で、ダークチェリーやラズベリーのような果実味と、穏やかながらもしっかりしたタンニンを持つのが特徴です。特に、柔らかい口あたりと爽やかな酸味が評価されており、ソムリエの田邉公一氏も「比較的穏やかなタンニン、爽やかな印象の酸味が感じられる」とコメントしています。


このような「柔らかくて飲みやすいタンニン」は、まさにデレスタージュが目指す方向性と一致しています。サイゼリヤが直接契約しているイタリアのワイナリーでは、デレスタージュをはじめとした現代的な醸造技術が積極的に採用されているとされています。


また、サイゼリヤは1993年からイタリアワインの直輸入を開始し、高級ワインと同様に定温15℃のリーファーコンテナで運搬しています。品質を守るためのこの取り組みのおかげで、現地の味わいがそのまま日本に届きます。現在サイゼリヤは日本国内でレストランとして最多のイタリアワイン消費量を誇ります。これだけ飲まれているということですね。


デレスタージュのような「柔らかさを引き出す技術」と、モンテプルチアーノという「飲みやすい品種」の組み合わせが、日常使いにぴったりの味を作り上げているわけです。


参考:サイゼリヤのワイン製造へのこだわりと直輸入の仕組みについて
サイゼリヤのボトルワイン – 公式サイト


参考:ソムリエによるサイゼリヤワインのテイスティングコメント
サイゼリヤのワインと料理のペアリング|田邉 公一 Wine director – note


サイゼリヤ好きが知っておくべきデレスタージュ系ワインの選び方

デレスタージュの知識が身についたら、次はそれをサイゼリヤや日々のワイン選びに役立てたい。以下にポイントを整理します。


① 柔らかいタンニンを求めるなら「イタリア産赤ワイン」に注目


デレスタージュはイタリアや南フランスのワイナリーで広く採用されています。サイゼリヤのメニューで見ると、赤のグラスワイン(モンテプルチアーノ)に加えて、ボトルワインのキャンティ・ルフィナ・リゼルバ(約1,100円)もその代表格です。キャンティはサンジョヴェーゼを主体とするトスカーナのワインで、軽快な酸とほどよい渋みが特徴。いずれも料理を邪魔しない飲みやすさが魅力です。


② 「なめらか」「フルーティー」「果実味豊か」という言葉がポイント


ワインのラベルや説明文に「シルキーなタンニン」「フルーティー」「柔らかい口あたり」などの表現がある場合、デレスタージュをはじめとした果帽管理に工夫が施されているワインである可能性があります。ラベルの説明文だけ確認すれば大丈夫です。


③ 料理との組み合わせで「渋み」の感じ方が変わる


デレスタージュで仕上げられた柔らかいタンニンのワインは、特に脂肪分の少ない料理との相性が良好です。サイゼリヤでいえば、「煉獄のたまご」「柔らかチキンのチーズ焼き」「ミラノ風ドリア」などが好相性です。逆に、タンニンの強いワインを渋みが強調される食材(強いタンニンを持つ食べ物、鉄分豊富な食材など)と合わせると、渋みが増幅して感じられる場合があります。


タンニンの強さが気になる方は、ワイン単体でなく必ず食事と合わせて飲むのが条件です。


④ サイゼリヤのランブルスコはデレスタージュとは対極


サイゼリヤで人気の高いランブルスコ・ロゼは微発泡の甘口で、赤ワインとはまったく異なる醸造プロセスを経ています。デレスタージュのような果帽管理は不要なタイプです。「渋みが苦手」という方にはこちらもおすすめですが、デレスタージュの世界観を楽しむなら赤ワインを選ぶのが王道です。


ワインの奥深さを知るきっかけとして、製法から入ってみるのも面白いですね。サイゼリヤは気軽に何杯でも試せる価格帯だからこそ、今日からでも「デレスタージュ視点」でグラスを傾けてみる価値があります。


参考:赤ワインの製造工程とデレスタージュを含む抽出手法の詳細
赤ワイン製造方法|各種ワインの製造工程 – 日欧商事(JET)