サイゼリヤのメニューに「ディアボラ」や「ボスカイオーラ」という名前を見て、全部わかるという人は実は少数派です。
カメリエーレ(cameriere)は、イタリア語で「男性ウェイター・給仕人」を意味する言葉です。辞書的にはシンプルにそう説明されますが、この単語の語源を知ると少し驚きます。
カメリエーレの語源は、イタリア語の「camera(カメラ)」、つまり「部屋」という言葉です。これはもともと貴族や富裕層の邸宅で、「部屋付きの召使い」として仕えた人物を指していたことに由来します。「部屋の管理者」がやがてレストランの給仕人という意味へと転じていったわけです。
ちなみに写真を撮る「カメラ」も同じ語源です。「部屋のように暗い箱(暗箱)」が原型だったため、camera obscura(暗室)と呼ばれ、それが現代のカメラという言葉になりました。語源的には「カメリエーレ」と「カメラ」は兄弟のような関係にある、といえます。意外ですね。
| イタリア語 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| cameriere | カメリエーレ | 男性ウェイター・給仕人 |
| cameriera | カメリエーラ | 女性ウェイター・給仕人 |
| camera | カメラ | 部屋 |
女性の給仕人は「カメリエーラ(cameriera)」と呼びます。イタリア語は名詞に男女の性があり、語尾が「-e」なら男性形、「-a」なら女性形になるケースが多いです。これが基本です。
サイゼリヤのようなファミレスでは「ウェイターさん」と気軽に呼びますが、本場イタリアの高級リストランテにおけるカメリエーレは、ワインの知識・料理の解説・食事のペース管理まで担う、高度なプロフェッショナルです。店の顔となる仕事だけに、接客マナーはもちろん豊富な専門知識が不可欠とされています。
参考:カメリエーレをはじめイタリアンレストランの職種呼称について詳しく解説されています。
ピッツァイオーロってなに? イタリアンシェフを目指すなら知っておきたい呼称 – 求人@飲食店.COM
先ほど触れたように、カメリエーレ(男性形)とカメリエーラ(女性形)は、対象の性別によって語尾が変わります。イタリア語では名詞・形容詞・職業名がすべて性別に応じて形が変わるのが特徴です。
日本語に置き換えると少し不思議に感じますが、英語でもactorとactressの違いがあるように、イタリア語ではその変化がほぼすべての名詞に及びます。日常生活ではウェイターを呼ぶとき「Scusi(スクーズィ)!」と声をかけるのが一般的で、カメリエーレという言葉自体を面と向かって使うシーンは少ないです。
また、ホール全体を束ねる責任者は「カポカメリエーレ(capo cameriere)」と呼ばれます。「カポ(capo)」は「頭・トップ」を意味するイタリア語で、料理長を指す「カポクオーコ」や、ソプラノなどの「首席」を示す場合にも使われます。つまり「カポ+職種名」でその役職のリーダーを表せる、という構造です。
サイゼリヤの場合、スタッフはアルバイトを含めて「クルー」という呼称を使うのが社内慣例となっており、カメリエーレという肩書きで呼ぶことはありません。ただし、サイゼリヤ自体がイタリア語文化を大切にしているお店なので、こうした言葉を知っておくとより深く楽しめます。これは使えそうです。
参考:イタリア語の職業名や語源についての解説記事。カメリエーレの語源についても記載されています。
イタリア語なるほどメモ34「いろいろな職業」 – ことばのはなし
本場イタリアのリストランテでカメリエーレとして働くには、単に料理を運べばよいだけではありません。求められるスキルの幅広さは、日本のファミレスのアルバイトスタッフとはまったく異なります。
まず、ワインの知識が不可欠です。イタリアには20の州があり、それぞれの州で生産されるワインの種類・特徴・料理との相性を把握していることが前提です。ゲストに「今日の魚料理に合うワインは?」と聞かれた際に即座に答えられるかどうかが、プロとしての評価を左右します。
次に、料理の解説力です。イタリア料理のコースは、アンティパスト(前菜)→プリモピアット(パスタ・リゾット)→セカンドピアット(メイン)→ドルチェ(デザート)という流れで構成されます。各料理の食材・調理法・産地をゲストにわかりやすく説明できることが求められます。
さらに、接客の「エレガントさ」もイタリアのカメリエーレには強く求められる要素です。動作・話し方・服装に至るまで、美しい印象をゲストに与えることが、その店の評価に直結します。笑顔と会話力も必須です。
フィレンツェの老舗レストラン「ソスタンツァ」では、創業1869年の歴史を支えるカメリエーレが35年以上のキャリアを誇るとも紹介されています。本場では一生の仕事として誇りをもって取り組む職業なのです。そのレベルは、日本のウェイターのイメージとはかなり違います。
サイゼリヤのメニューには、カメリエーレという言葉と同じく、本物のイタリア語がたくさん使われています。その意味を知ると、注文のときの楽しさがぐっと増します。
たとえば「若鶏のディアボラ風」の「ディアボラ(diavola)」はイタリア語で「悪魔」を意味します。辛みの効いたスパイシーな料理スタイルを、悪魔になぞらえて名付けたのが由来です。「悪魔風」という名前の本場イタリアでの意味は、スパイスをまとった鶏肉を強火でバリッと焼き上げる料理スタイルを指します。日本のサイゼリヤ版は野菜ソースでアレンジされていますが、ルーツを知るとまた違った目線で味わえます。
| メニュー名 | イタリア語の意味 |
|---|---|
| ディアボラ | 悪魔(ピリ辛・スパイシーな料理スタイルを指す) |
| ボスカイオーラ | きこり(bosco「森」が語源、きのこを使う料理) |
| ペスカトーレ | 漁師(魚介類をふんだんに使う料理スタイル) |
| アーリオ・オーリオ | にんにくと油(シンプルなオイル系パスタ) |
| カルボナーラ | 炭焼き職人・炭(carbonaioが語源) |
| アラビアータ | 怒った(arrabbiato:辛くて顔が赤くなる様から) |
| ポルチーニ | 子豚(きのこの形が由来) |
| マルゲリータ | イタリア王妃の名前(ギリシャ語で「真珠」が語源) |
「ボスカイオーラ」はイタリア語の「bosco(ボスコ)=森」から派生した「きこり」という意味です。森で働く木こりが、森で採れるきのこを使って作った料理がルーツとされています。サイゼリヤのボスカイオーラソースにきのこが入っているのは、この由来通りです。
「ペスカトーレ」は「漁師」という意味で、pescatore(ペスカトーレ)の語源は「魚(pesce)」です。魚介類をたっぷり使うパスタソースとして広く知られていますが、漁師が獲れたての魚を使って即席に作った料理が起源とされています。なるほど、という感じですね。
参考:サイゼリヤのメニューにまつわる語源・雑学100個をまとめた記事。イタリア語の意味が豊富に紹介されています。
サイゼリヤのメニューで雑学100個書いてみた – Nostra Vita
カメリエーレという言葉を入口に、イタリアンレストランでは他にも独特の職種名があります。これを知ると、本格的なイタリアンに行ったときの会話の幅が広がります。
厨房の最高責任者は「カポクオーコ(capo cuoco)」です。「カポ=トップ」+「クオーコ=料理人(cuocere=調理するが語源)」という組み合わせです。料理人の「クオーコ」は、英語のcookとほぼ同じ意味合いを持ちます。
ピザ専門の職人は「ピッツァイオーロ(pizzaiolo)」と呼ばれます。生地を天高く舞い上げるパフォーマンス「ピザ・アクロバット」の世界大会では、本場イタリアを押しのけて日本人(埼玉県出身の赤荻一也さん)が5連覇を達成したこともあります。これも知らないと損する豆知識です。
バリスタ(barista)は、日本ではコーヒーを淹れる専門家のイメージが定着していますが、イタリアでは「バール(Bar)でサービスする人」を意味します。コーヒーだけでなく、カクテルや食前酒なども含む飲み物全般を担当するのが本来の役割です。
サイゼリヤのような日常的なレストランでは、こうした役職の区別はほとんどありません。ただ、これらの言葉の背景には、長いイタリア料理の歴史と職人文化への深いリスペクトが込められています。知識として持っておくと、本格イタリアンを訪れたときの体験の質が一段上がります。これだけ覚えておけばOKです。
参考:イタリアンレストランの職種名の由来や役割について詳しく解説されている記事。
イタリア語なるほどメモ34「いろいろな職業」 – ことばのはなし