サイゼリアの白ワインは1杯100円なのに、カタラット系ワインは1本2,000円以上でも「安い」と言われます。
カタラットは、イタリア・シチリア島で最も広く栽培されている白ブドウ品種です。栽培面積は約25,935ha(2010年時点)で、シチリア全体の約30%を占めます。スポーツグラウンド(約1ha)に換算するとおよそ25,000面分という規模感です。驚くほどの広さですね。
品種の歴史は非常に古く、1696年の文献にも「シチリアで最も古い白ブドウ品種」と記されています。つまり、少なくとも330年以上にわたり、この島の食卓を支え続けてきた品種です。長い歴史が基本です。
品種としては主に「カタラット・コムーネ(Comune)」と「カタラット・ルーチド(Lucido)」という2種類のクローンに分かれます。コムーネは収量が多く力強い味わいで、ルーチドは果皮が薄く香り高いエレガントなスタイルが特徴です。ルーチドはイタリア全土でもトレッビアーノ種に次いで2番目に多く栽培されている白ブドウ品種とされており、そのスケールは国際的にも注目されています。
かつてカタラットは、大量生産向けの品種として扱われていました。マルサラ酒やバルクワインのベースとして使われ、品質より量が優先された時代が長く続きました。ところが1980年代以降、地元の若手生産者たちが「シチリアの土着品種の再発見」に動き出し、状況が一変します。低収量・高品質志向の栽培とステンレスタンクでの丁寧な醸造が普及し、現在では高品質なシチリア白ワインの象徴へと昇華しています。
つまり「安い大衆ワインの原料」から「テロワールを表現するエレガントな白ワイン」へと大転換が起きているということです。
イタリアワイン土着品種辞典 カタッラット(Vino Hayashi) — 品種の詳細な特性、クローン分類、フードペアリングの提案が網羅されています
カタラットの香りと味わいは、ひと言で言えば「地中海の潮風」です。グラスに注ぐと、レモンやグレープフルーツ、白い花のアロマが広がり、シチリアの太陽を感じさせる明るい印象があります。これは使えそうです。
しかし専門家の記述によれば、カタラットは「香りは豊かなのに、果実味は控えめ」という個性を持ちます。フルーティーに見えて、実はとろっとした口あたりが印象的で、余韻にはほのかな苦みも感じられます。意外な組み合わせですね。
特筆すべきは「塩っぽいミネラル感」です。地中海に囲まれた火山性土壌(特にエトナ山の火山灰由来の土地)で育ったブドウは、まるで海風を閉じ込めたような塩味のニュアンスをワインにもたらします。この塩気こそが、海鮮料理との相性を抜群にする最大の理由です。
アルコール度数については注意が必要です。温暖なシチリアで完熟するブドウは糖度が高く、カタラットのワインは度数が13〜14%になることも珍しくありません。見た目は爽やかな白ワインなのに、意外にアルコールが高めです。サイゼリアで複数グラス飲む際は、この点を頭に入れておくと安心です。
標高が高い畑(海抜400m以上)で造られたカタラットほど、酸がシャープになり、よりエレガントで軽やかな仕上がりになります。一方、低地のものはボリューム感があり、どっしりとした飲みごたえが出ます。産地の標高で味わいが変わる、というのは覚えておくと選ぶ楽しさが増します。
また、近年注目されているのが「オレンジワイン」スタイルのカタラットです。果皮と果汁を一緒に発酵させる製法により、通常の白ワインにはないタンニン(渋み)とアンバー色が生まれます。ナチュラルワインの流れに乗り、Alessandro ViolaやPorta del Ventoといった自然派生産者が手がけるカタラットのオレンジワインは、国内でも入手できます。
サイゼリアの白ハウスワインは「トレッビアーノ種」を使用しています。では「カタラットは関係ない」と思いますか。そこが面白いポイントです。
トレッビアーノもカタラットも、同じイタリア南部発祥の白ブドウ品種であり、どちらも「爽やかな酸味・フレッシュな柑橘系の風味・食事に合わせやすい軽快さ」という共通の個性を持ちます。サイゼリアが選んだトレッビアーノと、カタラットは"兄弟品種"のような関係です。
さらに重要な事実があります。グリッロはカタラット・ビアンコ・ルーチドとモスカート・ディ・アレッサンドリアの自然交配から生まれた品種です。つまりカタラットは、シチリアを代表する多くのワイン品種の「親」でもある存在です。
サイゼリアのハウスワインに慣れ親しんだ方が「もう少し個性のある白ワインを試したい」と思ったとき、カタラットは最初の一歩として非常に適した選択肢です。価格も700〜1,760円程度の銘柄から揃っており、いきなり高額ワインに挑戦しなくても始められます。
ちなみにサイゼリアでは、デカンタ250mlが200円(税込)というコストパフォーマンスがあります。この「サイゼリアのトレッビアーノ」の味わいを基準点として覚えておくと、カタラットを飲んだときの「違い」がより明確に分かります。トレッビアーノよりもボリューム感があり、塩味のミネラルが際立つのがカタラットの特徴です。
カタラットの特徴である「塩気のミネラル・柑橘系の酸・ほのかな苦み」を活かすには、油分・魚介・ハーブを使った料理が理想的です。サイゼリアのメニューはまさにその条件を満たすものが揃っています。
まず最強の組み合わせが「エスカルゴのオーブン焼き」です。オリーブオイルとガーリックのソースがたっぷりと染み込んだエスカルゴは、カタラットのハーブ系アロマと完璧にシンクロします。ワインのミネラル感がオイルの重さを洗い流し、後味をすっきりさせてくれます。
次におすすめなのが「小エビのサラダ」です。甘エビのプリッとした旨みと、レタスのシャキシャキ感、そしてサイゼリア特製のドレッシングの酸味が、カタラットの爽やかな柑橘系フレーバーとぴったりです。爽やかな組み合わせです。
「ムール貝のガーリック焼き」も見逃せません。貝類のヨード感(海の香り)は、カタラットの潮っぽいミネラルと見事に共鳴します。この料理こそ「地中海の食卓をそのまま体験できる組み合わせ」です。
イカや白身魚を使った「イカの墨入りセピアソースのパスタ」なども、カタラットの塩気と苦みがイカ墨の深みを受け止め、バランスが取れます。
「マルゲリータピザ」も意外な名コンビです。トマトソースの酸味とフレッシュチーズの乳製品感が、カタラットの果実味と調和します。重くなりがちなピザを、カタラットの酸がさっぱりとリセットしてくれます。
| サイゼリアメニュー | カタラットとの相性 | 理由 |
|---|---|---|
| エスカルゴのオーブン焼き | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ガーリック×オイルとハーブ香が共鳴 |
| 小エビのサラダ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | 甘エビの旨みを柑橘酸がリフト |
| ムール貝のガーリック焼き | ⭐⭐⭐⭐⭐ | 貝のヨード感とミネラルが一致 |
| マルゲリータピザ | ⭐⭐⭐⭐ | トマト酸味とチーズに酸が調和 |
| イカの墨入りセピアパスタ | ⭐⭐⭐⭐ | イカ墨の深みをミネラルが支える |
このペアリング情報を手元にメモしておくと、次のサイゼリア訪問がぐっと豊かになります。
カタラットのワインは、実は700円台から試せる入門銘柄が存在します。価格の壁は低いです。
まず最も手が届きやすいのが、イオンのワイン専門通販「AEON de WINE」でも扱われている「コラーレ カタラット(CORALE CATARRATTO)」です。税込767円ほどで購入でき、初めてカタラットを試す一本として手軽です。爽やかな柑橘の香りとすっきりした酸が特徴で、「まずカタラットってどんなもの?」という疑問を解消するのに最適です。
1,000〜2,000円台では「カルタ・ドーロ / ラッロ(Carta d'Oro / Lallo)」が定番です。1860年創業の老舗ワイナリーが1996年から造り続けるロングセラーで、エノテカでは1,760円(税込)で取り扱いがあります。フローラルなアロマとフルーティーな味わいが特徴で、シチリア白ワインの入門として最もバランスが取れた一本です。
少し個性を求めるなら「トーラ カタラット オーガニック」も魅力的です。海抜400mの有機栽培畑で育てられたカタラットを使用しており、ミネラルとフレッシュさが際立ちます。ヴィノスやまざきで取り扱いがあります。
さらに自然派路線を試したい方には、シチリアの自然派ワイナリー「ヴァルディベッラ(Valdibella)」が手がける「ムニール(Munir)」をおすすめします。柑橘・ハーブ・白い花のアロマを持ち、フルーティーで生き生きとした味わいが人気です。大和屋酒舗などの専門店で取り扱いがあります。
カタラットのワインは購入してから長期保管よりも、2〜3年以内のフレッシュな状態で飲む方が本来の魅力を楽しめます。冷蔵庫の野菜室で保管し、飲む1〜2時間前から冷蔵庫に入れて10〜12℃前後で楽しむのが原則です。
ヴィノスやまざき カタラットのワイン一覧 — 国内で購入できるカタラットのワインが揃い、品種説明と合わせて確認できます
エノテカ カタラット商品一覧 — 口コミや価格から比較でき、最短当日出荷対応の銘柄も確認できます
多くの人がサイゼリアのワインを「なぜこんなに安いのか」と疑問に思います。その答えの鍵のひとつが、カタラットのような土着品種の経済性にあります。
カタラットは、かつて大量生産向けのブドウとして過剰栽培された歴史があります。1990年代には生産過剰がヨーロッパの「ワイン湖問題」(EU内でワインが余りすぎて処分に困る問題)に大きく影響したと言われるほどです。生産量の多さが価格を押し下げ、良質なカタラットですら廉価で取引される構造が長年続いてきました。
サイゼリアが契約ワイナリーと直接取引し、流通コストを省くことでグラス100円を実現している事実は有名です。カタラット系の品種も同様のロジックで、産地から直接調達すれば品質の割に安価に入手できます。
つまり、「カタラットが安い=品質が低い」ではなく、「過去の大量生産の歴史と直接流通の仕組みが、価格を下げている」のが実態です。
さらに興味深いのは、近年のカタラットの「二極化」です。大衆向けの低価格帯は相変わらず安価で購入できる一方、高標高の畑での低収量栽培や、自然農法・ビオディナミ農法で丁寧に造られたカタラットは、5,000円を超える銘柄も存在します。同じブドウ品種でも、造り手と畑の哲学次第で価格が10倍以上違うということです。
サイゼリア好きにとってこれは大きなメリットです。つまり、少ない出費でカタラットの「入門編」を試しながら、好みが合えば徐々に上のクラスへステップアップできる品種だということです。ワインの世界への入り口として、これほど間口が広い品種はなかなかありません。
シチリアのワイン産業は今、オーガニック認証面積がイタリア全土の約38%を占めるほどに成長しています。病害虫が少なく農薬が抑えられるシチリアの気候は、有機栽培に理想的です。カタラットはその恩恵をもっとも受けている品種のひとつであり、環境への配慮という観点でも選ぶ理由になります。
Wikipedia カタラット — 品種の歴史、過去の大量生産問題、ヨーロッパワイン湖問題との関係が解説されています