グリッロは「コオロギが集まるほど糖度が高いのに、アルコール度数15度超えになることがある」白ワインです。
グリッロ(Grillo)という名前を聞いたことがありますか?イタリア語で「コオロギ」を意味する言葉です。
なぜブドウ品種にこんな名前がついたかというと、果実が熟して畑に落ちると、その強烈な甘い香りにコオロギが引き寄せられてきたから、という説が最も広く知られています。もう一説では、シチリアの方言で「種(グリッリ)」を意味するという説もあり、どちらが正しいかは諸説あります。
このグリッロ、実は完全な「自然の産物」ではなく、19世紀後半に農学者アントニオ・メンドーラ男爵によって人工交配で生み出された品種です。カタラットとジビッボという2つのシチリア土着品種をかけ合わせて誕生しました。4,000以上のブドウ苗を研究した男爵の手による、いわば「設計されたブドウ」ということです。これは意外ですね。
当初は酒精強化ワイン「マルサラ」の原料として栽培が広がりました。マルサラはスペインのシェリー、ポルトガルのポートやマデイラとともに「世界4大酒精強化ワイン」に数えられる格式あるワインで、グリッロはその主役品種として重宝されてきました。
ところが20世紀後半にマルサラの需要が落ちると、グリッロの栽培面積も一時縮小します。しかし近年、フレッシュな辛口白ワインとしての需要が急増し、現在ではシチリア全域で約6,295ヘクタール(東京23区の面積の約10倍)で栽培されるまで復活を遂げています。
1970年にイタリア全国ブドウ品種登録書に正式登録。今やシチリアを代表する白品種のひとつとして、世界中のワイン愛好家に注目されています。つまり「昔は強化ワインの脇役、今はフレッシュ白ワインの主役」というのがグリッロの現在地です。
グリッロの歴史・品種特性をさらに詳しく知りたい方はVino Hayashi品種辞典へ(栽培データや産地情報が充実)
グリッロを使ったワインには、どんな特徴があるのでしょうか?
まず香りの印象は「爽やか」の一言に尽きます。レモン・グレープフルーツを中心とした柑橘類の香りが第一印象として広がり、青りんご、セージやミントなどのハーブ系のニュアンスも共通して感じられます。そのほか、オレンジの花のような花香、潮風を連想させるミネラルの香りも特徴的です。海に囲まれたシチリア島ならではの個性といえるでしょう。
味わいは、フレッシュな酸が中程度からやや高め、アルコールは通常12.5〜13%程度のものが多いです。とくに特筆すべきは「塩味」で、テイスティングの専門家によればグラスに塩の跡が残るほどはっきりとした塩気を感じるワインもあるほど。これがグリッロをフード・フレンドリーなワインにしている大きな要素です。
一方、糖度が非常に高いシーズンには、アルコール度数が15度を超えることもあります。白ワインとしてはかなりのボリューム感ですね。見た目でわかるほど粘性(とろみ感)が強めに出ることもあり、それがグリッロのもうひとつの個性です。
| 項目 | グリッロの特徴 |
|------|--------------|
| 色調 | グリーンイエロー〜麦わら色 |
| 香り | 柑橘・ハーブ・ミネラル・花香 |
| 酸味 | 中程度〜やや高め |
| アルコール | 通常12.5〜13%(最大15%超も) |
| 塩味 | はっきりとした塩気が特徴 |
| 飲み頃適温 | 8〜12℃ |
飲み頃の温度は8〜12℃が基本です。飲む30分〜1時間前に冷蔵庫に入れておくと、ちょうどよい温度になります。冷やしすぎると香りが閉じてしまうので、キンキンに冷えた状態を避けるのがポイントです。そこだけ覚えておけばOKです。
熟成ポテンシャルは、ほとんどのグリッロは購入後2年程度で飲む「フレッシュ系」タイプが多いです。ただし複雑な造りのものは3〜5年の短期熟成でさらに個性を発揮することもあります。購入する際にヴィンテージを確認し、できるだけ新しいものを選ぶと香りのフレッシュさを楽しめます。
グリッロの外観・香り・味わいの詳細テイスティングレポートはVino Hayashi誌(グリッロを22本比較した詳細分析)
サイゼリヤが好きな方にとって、グリッロはまさに「最高のパートナー」になりえます。理由は、グリッロの特徴である酸・ミネラル・塩味が、シチリア料理と同じ発想で作られたサイゼリヤのイタリア料理と見事にリンクするからです。
ペアリングの基本原理として覚えておきたいのは「同じ土地の食とワインはよく合う」という考え方です。グリッロはシチリアの白ワイン。シチリア料理は魚介・トマト・チーズ・ハーブを多用します。サイゼリヤのメニューもこの発想に近いものが多い、というわけです。
具体的にグリッロと相性が良いサイゼリヤのメニューをまとめます。
逆に、グリッロと合わせにくいのは「スパイシーな辛い料理」や「甘いデザート系メニュー」です。グリッロは基本的に辛口ですので、激辛系との組み合わせは辛みを強調してしまうことがあります。辛い料理との組み合わせには注意が必要ということですね。
ちなみにサイゼリヤのグラス白ワイン(約120ml・税込100円)はトレッビアーノ種が使われています。グリッロはサイゼリヤのボトルワインラインナップではなく、イタリアン専門店やワインショップで購入して持ち込む(もしくはご自宅でサイゼリヤ料理を再現する)形での楽しみ方が一般的です。ボトル1本あれば約750ml、グラス5〜6杯分。2人でゆったり楽しむのにちょうど良い量です。
実際にどんなグリッロを選べばよいのか、具体的な銘柄を価格帯ごとに紹介します。
グリッロを初めて試す方には、まずスーパーやネット通販で手に入りやすいエントリー銘柄から試してみるのがおすすめです。
どれも1,000〜3,500円の範囲で楽しめるのがポイントです。同じ価格帯の有名産地のシャルドネと比べると、グリッロのほうがユニークな個性を持っていることが多く、「知ってる人だけ得する白ワイン」といえるかもしれません。
購入場所は、カルディ・成城石井・ドン・キホーテなどの輸入食品店のほか、Amazonや楽天などのネット通販でも入手しやすいです。ネット通販なら価格比較もしやすく、まとめ買いで送料を節約できます。
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グリッロの隠れた魅力として、あまり語られない「塩分(ミネラル)」の話をしておきたいと思います。
グリッロのワインには、他の白ワイン品種と比較してはっきりとした塩味が感じられます。これはシチリア島の地形と深く関係しています。シチリア島西部のトラーパニ周辺は地中海に突き出た低地で、石灰と塩分に富んだ砂質土壌が広がっています。その土壌から吸い上げられたミネラルがワインに塩気として反映されるのです。塩気が特徴ということですね。
このミネラル感は、料理との相性において非常に重要な役割を果たします。ワインに含まれる塩気が、食材の旨味(グルタミン酸)をより引き立てる「旨味の増幅効果」が生まれるためです。これが「グリッロは食事と合わせてこそ真価を発揮する」と言われる理由のひとつです。
また、白ワインに含まれる有機酸(酒石酸・リンゴ酸・クエン酸)には、腸内の善玉菌を増やすという研究報告もあります。もちろん飲み過ぎは禁物ですが、食事とともにグラス1〜2杯程度のグリッロを楽しむ飲み方は、イタリア人の食文化に根差したスタイルでもあります。「食事と一緒に少量ずつ飲む」が原則です。
健康的にワインを楽しむための具体的なヒントを整理すると、次のことが重要になります。
グリッロのアルコール度数は通常12.5〜13%ですが、ヴィンテージや産地によっては15%を超えることがある点は注意が必要です。ラベルに記載のアルコール度数を購入時に確認する習慣をつけておくと、飲む量の調整がしやすくなります。ラベルを見るだけで十分です。
なお、グリッロは果皮がやや厚く、強く圧搾するとワインに苦みが出やすい品種です。生産者の丁寧な醸造が品質を左右します。そのため「値段が同じならシチリアの老舗ワイナリーのもの」を選ぶと、仕上がりの安定感が高く満足度が得やすいです。これは知ってると得するポイントといえます。
グリッロの品種特性・産地DOC情報は日欧商事(JET)のブドウ品種辞典が詳しい