サイゼリヤの「タラコソースシシリー風」は、実はタラコパスタではなくカラスミ(ボッタルガ)料理の日本向けアレンジです。
京都・四条烏丸エリアにある「シチリア料理 リカータ」は、日本で数少ないシチリア料理の専門店です。店名の「リカータ」は、イタリア・シチリア島南西部アグリジェント県に実在する港町の名前から来ています。人口約3万9,000人のこの小さな港町で、オーナーシェフが1年間にわたって修業を積み、本場の味を習得しました。
修業先は「リストランテ・ラ・マディア」という星付きの高級レストランです。つまり「リカータ」というレストラン名は、シェフがシチリアへの敬意を込めた、原点の地の名前そのものなのです。
日本にもイタリアンレストランは数多くありますが、「シチリア」に絞った専門店というのは非常に珍しいです。京都では唯一とも言われています。
一般的なイタリアンとは料理の方向性が大きく異なります。たとえばトマトクリームパスタや生ハムメロンのような北・中部イタリアの料理ではなく、魚介・野菜・ナッツを多用した「南の島の力強い味」が並ぶのが特徴です。シチリア料理好きにはまさに聖地とも呼べる存在と言えるでしょう。
サイゼリヤが好きな方であれば、「タラコソースシシリー風」「イカの墨入りスパゲッティ」といったメニューに馴染みがあるはずです。それらのルーツをたどっていくと、必ずシチリア島という場所に行き着きます。「リカータ」はそのシチリア料理の世界を深く体験できる、希少な専門店として注目されています。
「シチリア料理 リカータ」のメニューは、ランチとディナーで異なる構成になっています。ランチは5種類のコースが用意されており、価格帯は以下の通りです。
| コース名 | 内容 | 価格(税込) |
|---|---|---|
| 【A】ピッコロランチ | 前菜+パスタなど小ぶりな構成 | 3,500円 |
| 【B】パスタランチ | 前菜盛り合わせ+選べるパスタ | 4,900円 |
| 【C】おまかせランチ | シェフおまかせの全品コース | 5,800円 |
| 【D】メインランチ | 前菜+パスタ+メイン料理 | 7,000円 |
| 【E】トゥリナクリアコース | シチリア料理を満喫できる豪華コース | 9,300円〜 |
ディナーでは「トゥリナクリアコース」(12品・11,000円税込)が看板プランとなっており、シチリア料理を多種多様に楽しめます。「トゥリナクリア(Trinacria)」とはシチリアの古代名であり、「三角形の島」を意味するシチリア人にとって誇りの言葉です。コース名にその言葉を使うあたりに、オーナーシェフのシチリア愛が感じられます。
アラカルト(単品)でも注文可能で、「魚介の前菜盛り合わせ」(2,600円)、「野菜の前菜盛り合わせ」(2,000円)、「オレンジとオリーヴのサラダ」(1,000円)、「甘海老のカルパッチョ・マディア風」(1,800円)などが揃います。
「マディア風」とはシチリア南部のマジャッコという地域スタイルを意識した調理法で、修業先のレストラン「ラ・マディア」の名を冠した一品です。これは知らないと見逃してしまうポイントです。
なお、席料として「コペルト(パン・グリッシーニ付き)500円」が別途かかることも覚えておくといいでしょう。本場イタリアのレストランでもコペルトは当然徴収されるもので、文化的な意味合いを含む慣習です。
「リカータ」のパスタは、サイゼリヤで親しまれているようなシンプルなパスタとはまったく異なる路線のものが並びます。シチリア料理の代表的なパスタを、リカータならではの解釈で提供しているのが大きな特徴です。
まず注目すべきは、アサリとレモンのパスタです。これは多くの来店客が「人気メニュー」と口コミで評価するリカータの定番で、南イタリアらしいシンプルな食材の組み合わせながら、レモンの柑橘感とアサリの旨みが絶妙に合わさった一皿になっています。
次に、イワシとパン粉のパスタ(パスタ・コン・レ・サルデ)も外せません。シチリアではこのパスタが9〜11世紀のアラブ統治時代に誕生したと言われており、松の実・レーズン・フェンネル(野生のウイキョウ)・カリカリのパン粉が組み合わさっています。甘さと塩気と香りが複雑に絡み合う「アグロドルチェ」(甘酸っぱい)の風味は、一口食べると「これがシチリアか」と実感できます。
また、パスタの種類もシチリア発祥のものが使われることがあります。「ブカティーニ」は中心に穴が開いた太めのパスタで、シチリア・パレルモでイワシのパスタに合わせるのが伝統的なスタイルです。直径は通常のスパゲッティより太い3〜6mm程度で、穴の部分にソースが絡む独特の食感があります。これは普通のイタリアンではなかなか出会えないものです。
つまり、パスタひとつとっても、食材の組み合わせ・パスタの形状・調味の哲学が普段と大きく違います。リカータのパスタを食べることは、シチリア食文化の教科書を1ページ読む体験と言えます。
参考:シチリアの名物パスタ5選についての詳しい情報はこちら
シチリアで食べるべき名物パスタ5選|Sicilia Handbook(シチリア旅行ガイド)
「リカータ」ではパスタだけでなく、前菜と締めのドルチェ(デザート)も高い評価を受けています。実は来店客の多くが「前菜で持って行かれた」と表現するほど、前菜の完成度が高いのがこの店の特徴です。
前菜の代表的なメニューとして「色々前菜の盛り合わせ」があります。一皿で14種類もの前菜を少しずつ味わえるという圧巻の構成で、生ハム・フリッタータ(イタリア式オムレツ)・カルパッチョなど、シチリア料理の多彩さを一度に体験できます。
シチリア料理の前菜には「カポナータ」という料理も欠かせません。ナス・玉ねぎ・セロリ・トマトをたっぷりのオリーブオイルで炒め、酢と砂糖で甘酸っぱく仕上げる料理です。フランスのラタトゥーユと似て見えますが、アグロドルチェの調味が入っている点が全く異なります。これはアラブ統治時代に持ち込まれた味付けが起源とされています。
デザートについても、シチリア料理は特別です。代表的なものとして「カンノーロ」(揚げた筒状の生地に羊のリコッタクリームを詰めたお菓子)や「グラニータ」(シチリア発祥の半冷凍のかき氷スイーツ)が有名です。グラニータは普通のシャーベットより粗く結晶状の食感で、ブリオッシュパンと一緒に食べるのがシチリア流です。映画「ゴッドファーザー」でも「カンノーロは持って行け」という有名なセリフが登場するほど、シチリア人に愛されているお菓子です。
リカータでは季節ごとに内容が変わるドルチェも提供されており、シチリア本場のレシピを忠実に再現したものが楽しめます。食事の最後まで「シチリア」を感じられるのが、リカータならではの体験です。
参考:シチリアの郷土料理の歴史と代表メニューの詳細はこちら
シチリア料理|Wikipedia(料理の歴史・食材・代表メニューを網羅)
サイゼリヤの「タラコソースシシリー風」を頼んだことがある人は多いでしょう。実は「シシリー(Sicily)」とはシチリアの英語名です。メニュー名が日本語・英語混在なので分かりにくいのですが、あのパスタはシチリア料理のエッセンスを取り入れた一品です。
本場シチリアには「パスタ・コン・ラ・ボッタルガ」という料理があります。ボッタルガとはボラやマグロの卵巣を塩漬け・乾燥させたカラスミのことで、これをすりおろしたオリーブオイルと混ぜてパスタに絡めるのが本場のスタイルです。サイゼリヤのタラコソースシシリー風は、このカラスミパスタを日本人向けにタラコ+生クリームでアレンジして誕生したメニューだとされています。つまり、元々は「タラコパスタ」ではなく「カラスミパスタ」だったのです。これは知らないと完全に見落とすポイントです。
他にも、サイゼリヤでおなじみの「イカの墨入りスパゲッティ」もシチリアとの深い関係があります。イカ墨パスタはヴェネツィアが有名ですが、「パスタ・アル・ネーロ・ディ・セッピア」としてシチリアでも非常に伝統的に食べられている料理です。また、「シチリア岩塩」というテーブル調味料がサイゼリヤに置かれていることも、サイゼリヤとシチリアのつながりを示しています。
サイゼリヤのメニューからシチリア料理に興味を持って「リカータ」に訪れるという流れは、実は非常に自然なステップです。リカータでは、サイゼリヤで親しんでいた味の「本家」「原形」に出会えます。たとえばリカータでボッタルガを使った正統派パスタを食べてみると、サイゼリヤのシシリー風との味の違いが体感でき、料理の歴史的背景までが一気に理解できます。これは食体験として非常に贅沢なものです。
参考:サイゼリヤのシシリー風パスタとシチリア料理の関係についての解説